今夜も君を独り占め。
「来なよ,あつ」



俺はゆるく手を招く碧のもとへ歩き,その横に腰かける。

ギッとスプリングが軋んだ。

意味もなくその顔を覗くと,やわく笑んだ碧が,真っ直ぐについた俺の右腕を突く。

見事に狙われたそこから,カクンと力が抜けた。

俺は前へと簡単に倒れる。

碧が言うには,最小限の力しか使わない主義だそうだが,俺はそっちの方がずっとやらしいと思う。

咄嗟に腕から落ちると,胴体に引かれた足が,ベッドからはみ出た。

庇うように右手を顔の前にやった時。

いつの間にか俺の上に来た碧が,反対の手を既に押さえ付けていた。



「碧」



急すぎだろと碧を見つめる。

碧はふっと馬鹿にするように俺を見た。



「前みたいにしたげよっか? お望みなら。ね? あつ」




そんなの……



「お断り,だ……!!!」



俺より小さなその悪魔は,俺に敵わないその力で俺を押さえたまま,またニッと笑った。
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