Nice to meet you「Daisy」

学校からほど近いこの図書館は、勉強をするのに一番集中できる場所だ。その場所が今、たった数秒前に会ったばかりのベルという女性によって入りづらい場所へと変わりつつある。

リオンは声のトーンは小さく、だがベルに聞こえるようにはっきりと言う。彼女と話している時間が無駄だ。この時間の間に、問題集の問題は五問ほどは解けたに違いない。

だが、リオンが懇願するように言った言葉はベルには何一つ届かなかったようだ。ベルはキョトンと首を傾げた後、リオンの手を掴む。

「とりあえず、行こ！！」

リオンの手をベルは引っ張っていく。ベルは華奢な手足をしているものの、それを感じさせないような強い力にリオンは驚いてしまった。

「ちょっ、離してください！荷物が！」

図書館の長い机には、問題集や筆記用具、さらに学校指定のかばんが置かれたままだ。そのかばんの中には財布やスマホが入っている。

「あ〜、大丈夫！あとで届けさせるから」