Nice to meet you「Daisy」
「今の君にオススメなのは……これかな?」

ベルはあるドアの前で立ち止まる。その部屋のドアのプレートにかけられていたのは、「ベルガモット」だ。一体この言葉が何なのかリオンはわからず、首を傾げる。

「あの、この部屋には何かあるんですか?」

変なものでも入っているのでは、と少し不安になるリオンに対し、ベルはただニコニコと笑う。

「まあ、入ってみたらわかるよ!」

そう言った後、ベルはドアを開けてリオンを強引に部屋の中に押し込む。刹那、柑橘系のどこか甘酸っぱい香りがリオンの鼻腔内に入り込んできた。

「ここは……」

広々とした部屋には柔らかそうなベッド、小説や漫画や雑誌が入った本棚、壁に取り付けられたテレビと、まるでホテルの一室のような光景が広がっている。

「ここで好きなようにくつろいでね」

ベルはそう言って部屋を出て行き、ドアを静かに閉める。一人残された部屋の中で、リオンは部屋に漂う香りを嗅ぎながら、本棚の前まで歩いてみる。
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