ふられたラブレター
第九章
中間、期末テストが終わり勉強を頑張った甲斐あって全ての教科が高得点だったさくらは、塾に通わずに済んだ。
が、しかし颯真(和真)は全教科全滅で夏休みに補習を受けることになってしまった。
(さくらには内緒)
○さくらの学校 お昼
みっちゃん「さくらお疲れさまー!テストの結果もバッチリで何よりだよ。毎日勉強頑張ったのと···愛の力かな?(笑)」
さくら「みっちゃんもテストお疲れさま!ホント塾通わなくて済んでホッとしてるよ。後は夏休みを待つのみだね〜。」
みっちゃん「今まであまり会えなかった分、夏休みは颯真くんとたくさんラブラブできると良いね!」
さくら「うん(笑)夏休み、海とかお祭りとかいろんなとこ行けたら良いな〜。」
○地下鉄のホーム 放課後
颯真(和真)「やっとテストも終わったし、またさくらと放課後デートできるのめっちゃ嬉しい。」
さくら「私も!でももうすぐ一学期も終わっちゃうねー。颯真くんは夏休みの予定とかある?」
颯真(和真)ギクッ
「夏休みは田舎のじいちゃん家に家族で行くことになっててさーしばらくこっちにはいないかも(嘘)」
(まさか夏休み中、毎日朝から夕方まで補習なんてさくらに言えるわけねぇよな···あーさくらと夏休みたくさん遊びたかったな。)
さくら「そうなんだー···じゃあ夏休み会うのは難しそうだね。仕方ないけどちょっと残念。」
颯真(和真)「マジでごめん。帰って来たらたくさん遊ぼうな。」
二人で駅のホームを歩いていると、ふとあるポスターに目が止まった。
さくら「···花火大会あるんだぁ。」
颯真(和真)「ホントだ。あれ、場所俺の地元だ。」
さくら「えっ、そうなの?」
颯真(和真)「うん。家からも場所近いし。懐かし〜小さい頃弟と有とよく行ったなー。」
(やべっ、つい有って口走っちまった)
颯真(和真)「さくらっ、今の···その、悪い。」
さくら「前に颯真くんが好きなのはさくらだけって言ってくれたから、もう大丈夫だよ。」
颯真(和真)(さくら······)
「さくら、ありがとな。」
「···じゃあさ、花火大会一緒に行く?俺、さくらと思い出作りたい。」
さくら「夏休み中だけど、良いの?」
颯真(和真)「おう、花火大会までには戻って来るから絶対行こう!」
さくら「うん、ありがとう。花火大会楽しみにしてるね。」
そして夏休みに突入
○和真の学校 補習中
和真(あ〜毎日暑いしダリィ···やってもやっても終わんねぇ。けど、さくらとの花火大会を楽しみに頑張るか。)
毎日補習に励む和真。
さくらはみっちゃんとお出かけしたり、はなとプールに行ったりそれぞれ夏休みを満喫中!?
そして花火大会前日。
○和真の家の近くのコンビニ 補習終わり
和真(今日も補習お疲れさんっと。ふーコンビニでも寄って帰るか。)
そこでコンビニから出てきた有とはち合わせする。
和真·有 「!?」
和真·有「···よっ。」
和真「見事にハモったな。」
有「だね(笑)」
和真「じゃあ。」
有「待って。」
店に入ろうとする和真を引き止めようとする有。
有「久しぶりだね、和真。」
和真「ああ。」
有が不自然にさくらに近付き、“颯真”と付き合っていることをさくらに聞き出した件があるため、あまり関わりたくない和真。
有「明日、花火大会あるの知ってる?」
有はコンビニに貼られている花火大会のポスターを指さして言った。
和真「こんなとこにも貼ってんのか。あ、地元だからか。」
有「幼稚園か小学生の頃さ、私と和真と颯真で毎年ここの花火大会行ったよね〜懐かしいなぁ。」
幼い頃を懐かしむように話す有。そして···
有「私、明日颯真に告白しようと思う。」
和真 「!」
「······良いのか?アイツ今···」
有「彼女がいるのは知ってる。けど、私も子どもの頃からずっと颯真が好きで、この気持ちだけはちゃんと伝えてからふられたい。」
和真「そ···っか。そんな風に思えるなんて有はすげーな。まぁ、頑張れよ。」
(有は颯真とさくらが付き合ってるって思ってるんだよな···俺のせいで。)
有「ありがと。和真は花火大会行くの?彼女、いるんでしょ?」
和真「···おう。」
有「彼女大事にね。」
そう言うと有は手を振り帰って行った。
○和真·颯真の家 夜
リビングでテレビを見ている颯真に、シャワーから上がった和真が話しかける。
和真「颯真、明日ってなんか予定ある?」
颯真「えっ?予定って?」
和真「は、花火大会とか······」
颯真「花火大会?地元の?行くわけないじゃん。あんな人混みの多いところ。」
和真「そっか。」
颯真「和真は行くのか?さくらちゃんと。」
和真「うん、そのつもりだけど···。」
颯真「良いけど、人多いからバレないように気をつけろよ〜俺たちの知り合いに見つかったらマズいだろ?」
和真「······から」
颯真「ん?聞こえなかった、もう一回···」
和真「明日で最後にするから。」
和真は切ない表情で颯真にそう言った。
和真「さくらとの思い出が欲しいから明日、ガキの頃よく花火を見ていた特等席にさくらを連れて行く。」
颯真「······わかった。楽しんでこいよ。」
和真「うん。あっ、明日念のため夕方には家にいろよ?」
颯真「は?なんで···」
和真はそう言い残すと、自分の部屋に戻って行った。
○花火大会当日 さくらの家
花火大会に行くため浴衣を着たさくら。
はな「わぁ〜お姉ちゃん可愛い!!」
さくら「ありがと〜〜!!」
はな「あー私も行きたかったなぁ、花火大会···。」
さくら「はなちゃんはカテキョ(家庭教師)の日だもんね。ほら、もうすぐ雅生さん来るよ〜」
はな「ゔぅ···お姉ちゃんだけズルい···」
さくら「ごめんね、はなちゃんの好きなリンゴ飴買ってくるからね。」
母「楽しいのはわかるけど、あまり遅くならないうちに帰ってくるのよ。」
さくら「はーい。じゃあ行ってきます!」
さくら(夏休みに入って颯真くんに全然会えなかったから、花火大会ホント楽しみ!颯真くん元気かな?日焼けしてるかな?)
花火大会の会場がある颯真(和真)の地元の駅の前で待ち合わせ。
待ち合わせ場所にはもうすでに颯真(和真)が待っていた。
さくら「颯真くん!」
近くにかけより手を振るさくら。
颯真(和真)「さくら······っ」
(浴衣姿やば···可愛すぎて直視できね)
「···浴衣似合ってるし可愛いな。」
照れながらそう言うのが精一杯の颯真(和真)
さくら「ありがとう。颯真くんは今日はキャップなんだね。」
颯真(和真)「あぁ、夏だからなー。」
(ホントはバレ防止だけど)
「んじゃ、行くか。あっ、途中で足痛くなったら言えよ?」
さくら「うん···」
(颯真くんてよく気がつくよね、お花見デートの時のブランケットとか、草履とか。
···過去に付き合ってた彼女いたのかな?)
○回想シーン
小さい頃から外で遊んだり花火大会の度に
「かずま〜さむい」「かずま〜あしいたい」と有にパシリにされてるだけだった。
○回想シーン終
颯真(和真)「花火大会の場所、家からホント近くてさ、花火俺ん家からも見えるんだー。そんなにでっかくはないけど。」
さくら「良いな〜家から花火が見れるなんて素敵だね。じゃあ今日もご家族の方はお家で花火鑑賞?」
颯真(和真)「いや···弟は多分花火見に行くと思う。」
さくら「そうなんだ、じゃあ会場のどこかで会えるかもしれないね。」
会場に到着。会場は人と屋台で賑わっていた。
颯真(和真)「さくら、食べたい物とかしたいことある?」
さくら「えっと、ヨーヨーとクジと、たこ焼きに綿あめにチョコバナナ、あとクレープも食べたいな!」
颯真(和真)「ハハッ、良いよ。全部やろっか!」
一緒にヨーヨーすくいをしたり、たこ焼きやわたあめをはんぶんこして食べたり、さくらと颯真(和真)は屋台を回って楽しんだ。
颯真(和真)「ハァー遊んだし、食った食った。」
さくら「屋台たくさん回って楽しかったね!」
颯真(和真)「楽しみはまだまだこれからだって。花火があがるまであと1時間か···よし、そろそろ行くか。」
その頃颯真は···
○颯真の家
颯真「和真のやつ、家に居ろって言ってたけど、自分だけさっさと出かけやがって。
···本当に最後に出来るのか?」
ピンポーン
その時突然家のインターホンが鳴った。
颯真「はーい。」
ガチャ
有「良かった···家にいた。あのさ、私颯真に話があるんだけど。」
颯真「話?なに?」
有「き、今日彼女はいないの?」
颯真「彼女?何の事?」
有「······っ。ちょっと行きたい場所あるんだけど!」
○花火大会会場 さくら&颯真(和真)
颯真(和真)「ここ、小さい頃よく花火を見ていた特等席なんだ。」
さくら「会場の隅にこんな場所があるんだー。」
「ここが颯真くんの思い出の場所なんだね。」
颯真(和真)「うん。···今日はさくらと一緒に花火大会来れて、楽しい思い出作れて良かった。ありがとな。」
さくら「私も、花火大会颯真くんと来られて良かった。ありがとう。」
颯真(和真)「さくら······」
「ここなら誰にもじゃまされずに2人きりで花火が見れるよ。」
颯真(和真)はそう言うとさくらを引き寄せるように優しく抱きしめた。
○花火大会会場 颯真&有
颯真「行きたい場所って···ここ?」
有「そう。小さい頃、よく和真入れて3人で花火見に来たよね。」
颯真「そうだな。俺、その頃体弱くて足も遅かったからよく2人に置いてかれてたよな(苦笑)」
有「今は逆、私が颯真に置いてかれて···彼女がいるってわかった時なんでもっと早く言わなかったんだろうってすごく後悔したけど、今日また言わなくて後悔したくないから今言うね。」
「私、小さい頃からずっと颯真のことが好き。」
○花火大会会場 さくら&颯真(和真)
さくら「······颯真くん、好き。」
颯真(和真)「······っ」
颯真(和真)が両手でさくらの頬に触れると颯真(和真)の口が近づき、さくらは目をとじて······
ヒュ〜ドーン
その時ちょうど夜空に花火が上がった。
さくら「······?」
さくらがゆっくり目を開けると、颯真(和真)は両手をさくらの両肩に置き、下を向き震えながら「ごめん。」と言った。
○花火大会会場 颯真&有
花火の音と同時に颯真は有を抱きしめた。
颯真「俺も、ずっと有が好きだった。今まで言えなくてごめん。
小さい頃、俺が風邪ひいて家で寝ていたら有はよく果物持っておみまいに来てくれて、足が遅くても待ってて一緒に歩いてくれて···そういうの全部嬉しかった。」
「だから俺も有に追いつきたくて勉強もスポーツも努力したけど、中学に入って有、急に綺麗になってモテて告白もされてたみたいだし···また追いこされたかなと思って半分諦めて正直距離を置いてたんだ。
けど、今好きって言ってもらえて同じ気持ちだったんだってわかって良かった。伝えてくれてありがとう。」
有「私こそ、好きって言ってくれてありがとう。すごく嬉しいんだけど、やっぱり一つ引っかかることがあって···颯真、さくらちゃんと付き合ってるの?」
颯真「付き合ってないよ。···詳しくは俺からは言えないんだけど、んと有もよく知る俺の相方が関わっていて、そいつ不器用なりになんとか今自分で好きな子を大切にしようとしている途中だから、解決するまで話すのはもう少し待ってほしい。」
有(相方ってもしかして···)
「よくわかんないけど、颯真の気持ちはよくわかった。私、颯真の言葉を信じるね。」
颯真「うん、ありがと。じゃあ、有は今から俺の彼女ってことで良い?」
有「はい。よろしくお願いします。
あっ、せっかくだから私達の思い出の特等席で花火見ない?」
颯真「······今日は貸し切りだから、また来年ね。」
○花火大会会場 さくら&颯真(和真)
さくら「···ごめんって?」
颯真(和真)「··········」
さくら「どうしたの?私何か気に触ることしちゃったかな?」
颯真(和真)「さくらは悪くないよ。」
さくら「じゃあ、なんでさっき······っ」
言葉に詰まるさくら。
さくら「······私のこと嫌いになっちゃった?」
颯真(和真)「嫌いじゃねぇよ!!それは絶対ない。ただ·····」
「俺、さくらに嘘ついてることある······」
○さくらの家 はなの部屋
家庭教師の雅生と勉強中のはな。
ふと時計を見ると時刻は9時をまわっていた。
雅生「よし、じゃあ今日はここまでにしようか。」
はな「お姉ちゃん早く帰ってこないかなーリンゴ飴食べたいよ〜。」
雅生「今日花火大会だっけ?帰りの地下鉄混雑してなきゃ良いけどね。」
はな「うん。···けどさー花火大会で恋の火もついちゃって「今日は帰さないよ」って言われてまた彼氏のお家に行ってたりして。なーんてそんなわけないか。」
雅生「えっ、家って?」
はな「少し前だけど彼氏に誘われてお家に遊びに行ってたよ。テスト勉強するって言ってたけど、ホントに勉強だけなのかなぁ(笑)」
雅生「確か付き合って数ヶ月だよね?家に行くの早くない?まだ高校生だし。
それにさくらちゃん、恋愛初心者だから心配だよ。」
「その男···本当に大丈夫?」
バタン
その時玄関のドアが閉まる音がした。
はな「あっ、お姉ちゃんかも!」
はなが階段を降りて行くと······
はな「!?」
「お姉ちゃん!!どうしたの!?」
そこには今にも泣きそうな顔でぼう然と立ちつくす、さくらの姿があった。
○さくらを送った後 家に帰る途中の颯真(和真)
○回想シーン
颯真(和真)(あの後、さくらと一言も話せなかったな。)
さくらを家まで送り届ける道中、2人はずっと黙ったままだった。
そしてさくらの家の前に着くと、颯真(和真)は「また連絡するから。」とだけ言ってわかれた。
○回想シーン終
颯真(和真)(最後にさくらを傷つけちまった。優しくしたかったのに、できなかった······)
颯真(和真)の家の前に着くと、手をつなぐ颯真と有にはち合わせする。
有「あれっ、和真?」
颯真(和真)「······」
有「なんか元気なくない?ってか髪黒くした?こうして見ると颯真ソックリ(笑)」
颯真「和真···大丈夫か?」
颯真(和真)「2人···付き合うことになったの?」
颯真「うん。」
颯真(和真)「そっか。おめでと。」
そう言うと颯真(和真)は家に入っていった。
玄関でしゃがみ込む颯真(和真)
颯真(和真)「さくらごめん。······潮時だ。」
が、しかし颯真(和真)は全教科全滅で夏休みに補習を受けることになってしまった。
(さくらには内緒)
○さくらの学校 お昼
みっちゃん「さくらお疲れさまー!テストの結果もバッチリで何よりだよ。毎日勉強頑張ったのと···愛の力かな?(笑)」
さくら「みっちゃんもテストお疲れさま!ホント塾通わなくて済んでホッとしてるよ。後は夏休みを待つのみだね〜。」
みっちゃん「今まであまり会えなかった分、夏休みは颯真くんとたくさんラブラブできると良いね!」
さくら「うん(笑)夏休み、海とかお祭りとかいろんなとこ行けたら良いな〜。」
○地下鉄のホーム 放課後
颯真(和真)「やっとテストも終わったし、またさくらと放課後デートできるのめっちゃ嬉しい。」
さくら「私も!でももうすぐ一学期も終わっちゃうねー。颯真くんは夏休みの予定とかある?」
颯真(和真)ギクッ
「夏休みは田舎のじいちゃん家に家族で行くことになっててさーしばらくこっちにはいないかも(嘘)」
(まさか夏休み中、毎日朝から夕方まで補習なんてさくらに言えるわけねぇよな···あーさくらと夏休みたくさん遊びたかったな。)
さくら「そうなんだー···じゃあ夏休み会うのは難しそうだね。仕方ないけどちょっと残念。」
颯真(和真)「マジでごめん。帰って来たらたくさん遊ぼうな。」
二人で駅のホームを歩いていると、ふとあるポスターに目が止まった。
さくら「···花火大会あるんだぁ。」
颯真(和真)「ホントだ。あれ、場所俺の地元だ。」
さくら「えっ、そうなの?」
颯真(和真)「うん。家からも場所近いし。懐かし〜小さい頃弟と有とよく行ったなー。」
(やべっ、つい有って口走っちまった)
颯真(和真)「さくらっ、今の···その、悪い。」
さくら「前に颯真くんが好きなのはさくらだけって言ってくれたから、もう大丈夫だよ。」
颯真(和真)(さくら······)
「さくら、ありがとな。」
「···じゃあさ、花火大会一緒に行く?俺、さくらと思い出作りたい。」
さくら「夏休み中だけど、良いの?」
颯真(和真)「おう、花火大会までには戻って来るから絶対行こう!」
さくら「うん、ありがとう。花火大会楽しみにしてるね。」
そして夏休みに突入
○和真の学校 補習中
和真(あ〜毎日暑いしダリィ···やってもやっても終わんねぇ。けど、さくらとの花火大会を楽しみに頑張るか。)
毎日補習に励む和真。
さくらはみっちゃんとお出かけしたり、はなとプールに行ったりそれぞれ夏休みを満喫中!?
そして花火大会前日。
○和真の家の近くのコンビニ 補習終わり
和真(今日も補習お疲れさんっと。ふーコンビニでも寄って帰るか。)
そこでコンビニから出てきた有とはち合わせする。
和真·有 「!?」
和真·有「···よっ。」
和真「見事にハモったな。」
有「だね(笑)」
和真「じゃあ。」
有「待って。」
店に入ろうとする和真を引き止めようとする有。
有「久しぶりだね、和真。」
和真「ああ。」
有が不自然にさくらに近付き、“颯真”と付き合っていることをさくらに聞き出した件があるため、あまり関わりたくない和真。
有「明日、花火大会あるの知ってる?」
有はコンビニに貼られている花火大会のポスターを指さして言った。
和真「こんなとこにも貼ってんのか。あ、地元だからか。」
有「幼稚園か小学生の頃さ、私と和真と颯真で毎年ここの花火大会行ったよね〜懐かしいなぁ。」
幼い頃を懐かしむように話す有。そして···
有「私、明日颯真に告白しようと思う。」
和真 「!」
「······良いのか?アイツ今···」
有「彼女がいるのは知ってる。けど、私も子どもの頃からずっと颯真が好きで、この気持ちだけはちゃんと伝えてからふられたい。」
和真「そ···っか。そんな風に思えるなんて有はすげーな。まぁ、頑張れよ。」
(有は颯真とさくらが付き合ってるって思ってるんだよな···俺のせいで。)
有「ありがと。和真は花火大会行くの?彼女、いるんでしょ?」
和真「···おう。」
有「彼女大事にね。」
そう言うと有は手を振り帰って行った。
○和真·颯真の家 夜
リビングでテレビを見ている颯真に、シャワーから上がった和真が話しかける。
和真「颯真、明日ってなんか予定ある?」
颯真「えっ?予定って?」
和真「は、花火大会とか······」
颯真「花火大会?地元の?行くわけないじゃん。あんな人混みの多いところ。」
和真「そっか。」
颯真「和真は行くのか?さくらちゃんと。」
和真「うん、そのつもりだけど···。」
颯真「良いけど、人多いからバレないように気をつけろよ〜俺たちの知り合いに見つかったらマズいだろ?」
和真「······から」
颯真「ん?聞こえなかった、もう一回···」
和真「明日で最後にするから。」
和真は切ない表情で颯真にそう言った。
和真「さくらとの思い出が欲しいから明日、ガキの頃よく花火を見ていた特等席にさくらを連れて行く。」
颯真「······わかった。楽しんでこいよ。」
和真「うん。あっ、明日念のため夕方には家にいろよ?」
颯真「は?なんで···」
和真はそう言い残すと、自分の部屋に戻って行った。
○花火大会当日 さくらの家
花火大会に行くため浴衣を着たさくら。
はな「わぁ〜お姉ちゃん可愛い!!」
さくら「ありがと〜〜!!」
はな「あー私も行きたかったなぁ、花火大会···。」
さくら「はなちゃんはカテキョ(家庭教師)の日だもんね。ほら、もうすぐ雅生さん来るよ〜」
はな「ゔぅ···お姉ちゃんだけズルい···」
さくら「ごめんね、はなちゃんの好きなリンゴ飴買ってくるからね。」
母「楽しいのはわかるけど、あまり遅くならないうちに帰ってくるのよ。」
さくら「はーい。じゃあ行ってきます!」
さくら(夏休みに入って颯真くんに全然会えなかったから、花火大会ホント楽しみ!颯真くん元気かな?日焼けしてるかな?)
花火大会の会場がある颯真(和真)の地元の駅の前で待ち合わせ。
待ち合わせ場所にはもうすでに颯真(和真)が待っていた。
さくら「颯真くん!」
近くにかけより手を振るさくら。
颯真(和真)「さくら······っ」
(浴衣姿やば···可愛すぎて直視できね)
「···浴衣似合ってるし可愛いな。」
照れながらそう言うのが精一杯の颯真(和真)
さくら「ありがとう。颯真くんは今日はキャップなんだね。」
颯真(和真)「あぁ、夏だからなー。」
(ホントはバレ防止だけど)
「んじゃ、行くか。あっ、途中で足痛くなったら言えよ?」
さくら「うん···」
(颯真くんてよく気がつくよね、お花見デートの時のブランケットとか、草履とか。
···過去に付き合ってた彼女いたのかな?)
○回想シーン
小さい頃から外で遊んだり花火大会の度に
「かずま〜さむい」「かずま〜あしいたい」と有にパシリにされてるだけだった。
○回想シーン終
颯真(和真)「花火大会の場所、家からホント近くてさ、花火俺ん家からも見えるんだー。そんなにでっかくはないけど。」
さくら「良いな〜家から花火が見れるなんて素敵だね。じゃあ今日もご家族の方はお家で花火鑑賞?」
颯真(和真)「いや···弟は多分花火見に行くと思う。」
さくら「そうなんだ、じゃあ会場のどこかで会えるかもしれないね。」
会場に到着。会場は人と屋台で賑わっていた。
颯真(和真)「さくら、食べたい物とかしたいことある?」
さくら「えっと、ヨーヨーとクジと、たこ焼きに綿あめにチョコバナナ、あとクレープも食べたいな!」
颯真(和真)「ハハッ、良いよ。全部やろっか!」
一緒にヨーヨーすくいをしたり、たこ焼きやわたあめをはんぶんこして食べたり、さくらと颯真(和真)は屋台を回って楽しんだ。
颯真(和真)「ハァー遊んだし、食った食った。」
さくら「屋台たくさん回って楽しかったね!」
颯真(和真)「楽しみはまだまだこれからだって。花火があがるまであと1時間か···よし、そろそろ行くか。」
その頃颯真は···
○颯真の家
颯真「和真のやつ、家に居ろって言ってたけど、自分だけさっさと出かけやがって。
···本当に最後に出来るのか?」
ピンポーン
その時突然家のインターホンが鳴った。
颯真「はーい。」
ガチャ
有「良かった···家にいた。あのさ、私颯真に話があるんだけど。」
颯真「話?なに?」
有「き、今日彼女はいないの?」
颯真「彼女?何の事?」
有「······っ。ちょっと行きたい場所あるんだけど!」
○花火大会会場 さくら&颯真(和真)
颯真(和真)「ここ、小さい頃よく花火を見ていた特等席なんだ。」
さくら「会場の隅にこんな場所があるんだー。」
「ここが颯真くんの思い出の場所なんだね。」
颯真(和真)「うん。···今日はさくらと一緒に花火大会来れて、楽しい思い出作れて良かった。ありがとな。」
さくら「私も、花火大会颯真くんと来られて良かった。ありがとう。」
颯真(和真)「さくら······」
「ここなら誰にもじゃまされずに2人きりで花火が見れるよ。」
颯真(和真)はそう言うとさくらを引き寄せるように優しく抱きしめた。
○花火大会会場 颯真&有
颯真「行きたい場所って···ここ?」
有「そう。小さい頃、よく和真入れて3人で花火見に来たよね。」
颯真「そうだな。俺、その頃体弱くて足も遅かったからよく2人に置いてかれてたよな(苦笑)」
有「今は逆、私が颯真に置いてかれて···彼女がいるってわかった時なんでもっと早く言わなかったんだろうってすごく後悔したけど、今日また言わなくて後悔したくないから今言うね。」
「私、小さい頃からずっと颯真のことが好き。」
○花火大会会場 さくら&颯真(和真)
さくら「······颯真くん、好き。」
颯真(和真)「······っ」
颯真(和真)が両手でさくらの頬に触れると颯真(和真)の口が近づき、さくらは目をとじて······
ヒュ〜ドーン
その時ちょうど夜空に花火が上がった。
さくら「······?」
さくらがゆっくり目を開けると、颯真(和真)は両手をさくらの両肩に置き、下を向き震えながら「ごめん。」と言った。
○花火大会会場 颯真&有
花火の音と同時に颯真は有を抱きしめた。
颯真「俺も、ずっと有が好きだった。今まで言えなくてごめん。
小さい頃、俺が風邪ひいて家で寝ていたら有はよく果物持っておみまいに来てくれて、足が遅くても待ってて一緒に歩いてくれて···そういうの全部嬉しかった。」
「だから俺も有に追いつきたくて勉強もスポーツも努力したけど、中学に入って有、急に綺麗になってモテて告白もされてたみたいだし···また追いこされたかなと思って半分諦めて正直距離を置いてたんだ。
けど、今好きって言ってもらえて同じ気持ちだったんだってわかって良かった。伝えてくれてありがとう。」
有「私こそ、好きって言ってくれてありがとう。すごく嬉しいんだけど、やっぱり一つ引っかかることがあって···颯真、さくらちゃんと付き合ってるの?」
颯真「付き合ってないよ。···詳しくは俺からは言えないんだけど、んと有もよく知る俺の相方が関わっていて、そいつ不器用なりになんとか今自分で好きな子を大切にしようとしている途中だから、解決するまで話すのはもう少し待ってほしい。」
有(相方ってもしかして···)
「よくわかんないけど、颯真の気持ちはよくわかった。私、颯真の言葉を信じるね。」
颯真「うん、ありがと。じゃあ、有は今から俺の彼女ってことで良い?」
有「はい。よろしくお願いします。
あっ、せっかくだから私達の思い出の特等席で花火見ない?」
颯真「······今日は貸し切りだから、また来年ね。」
○花火大会会場 さくら&颯真(和真)
さくら「···ごめんって?」
颯真(和真)「··········」
さくら「どうしたの?私何か気に触ることしちゃったかな?」
颯真(和真)「さくらは悪くないよ。」
さくら「じゃあ、なんでさっき······っ」
言葉に詰まるさくら。
さくら「······私のこと嫌いになっちゃった?」
颯真(和真)「嫌いじゃねぇよ!!それは絶対ない。ただ·····」
「俺、さくらに嘘ついてることある······」
○さくらの家 はなの部屋
家庭教師の雅生と勉強中のはな。
ふと時計を見ると時刻は9時をまわっていた。
雅生「よし、じゃあ今日はここまでにしようか。」
はな「お姉ちゃん早く帰ってこないかなーリンゴ飴食べたいよ〜。」
雅生「今日花火大会だっけ?帰りの地下鉄混雑してなきゃ良いけどね。」
はな「うん。···けどさー花火大会で恋の火もついちゃって「今日は帰さないよ」って言われてまた彼氏のお家に行ってたりして。なーんてそんなわけないか。」
雅生「えっ、家って?」
はな「少し前だけど彼氏に誘われてお家に遊びに行ってたよ。テスト勉強するって言ってたけど、ホントに勉強だけなのかなぁ(笑)」
雅生「確か付き合って数ヶ月だよね?家に行くの早くない?まだ高校生だし。
それにさくらちゃん、恋愛初心者だから心配だよ。」
「その男···本当に大丈夫?」
バタン
その時玄関のドアが閉まる音がした。
はな「あっ、お姉ちゃんかも!」
はなが階段を降りて行くと······
はな「!?」
「お姉ちゃん!!どうしたの!?」
そこには今にも泣きそうな顔でぼう然と立ちつくす、さくらの姿があった。
○さくらを送った後 家に帰る途中の颯真(和真)
○回想シーン
颯真(和真)(あの後、さくらと一言も話せなかったな。)
さくらを家まで送り届ける道中、2人はずっと黙ったままだった。
そしてさくらの家の前に着くと、颯真(和真)は「また連絡するから。」とだけ言ってわかれた。
○回想シーン終
颯真(和真)(最後にさくらを傷つけちまった。優しくしたかったのに、できなかった······)
颯真(和真)の家の前に着くと、手をつなぐ颯真と有にはち合わせする。
有「あれっ、和真?」
颯真(和真)「······」
有「なんか元気なくない?ってか髪黒くした?こうして見ると颯真ソックリ(笑)」
颯真「和真···大丈夫か?」
颯真(和真)「2人···付き合うことになったの?」
颯真「うん。」
颯真(和真)「そっか。おめでと。」
そう言うと颯真(和真)は家に入っていった。
玄関でしゃがみ込む颯真(和真)
颯真(和真)「さくらごめん。······潮時だ。」