ふられたラブレター

第八章

○さくらの家 家族で夕食中

母「最近帰りが遅いけど、勉強はちゃんとしてるの?」

さくら ドキッ「うん、ちゃんとしてるよ。」

はな「勉強とデート、両立出来るなんてさすがお姉ちゃん!」

さくら !?「は、はなちゃん!シー」

親に颯真(和真)と付き合ってることを話していないさくらは、慌ててはなに向かってシーっと言った。

母「ん?デート??さくら付き合ってる男の子いるの?」

興味津々の母。

さくら「···うん。」

恥ずかしそうにうなずくさくら。

母「そう。お母さんも会ってみたいし、じゃあ今度家に連れてらっしゃい。」

母は嬉しそうに微笑んだが···

「では、両立上手のさくらちゃん。今度の中間と期末テストの結果、お母さん楽しみにしてるからね。」

「もし結果が悪ければ···当然塾に通ってもらいます!」

さくら (えぇ〜〜〜)


○さくらの部屋 

はな「お姉ちゃん、さっきは余計なこと言ってごめんね〜!」

さくら「ううん。颯真くんのことはいずれ話すつもりだったしそれは良いんだけど、テストどうしよう···」

「結果が悪くてもし塾に入ることになったら、颯真くんに会える時間が減っちゃう···。」

はな「せっかく付き合えることになったのに、それは寂しいよね。」

「あっ、そうだ!雅生さんに勉強教えてもらうのはどう?」

さくら「雅生さんは無理だよ〜はなちゃん受験生なんだから、はなちゃんがちゃんと勉強見てもらわないとね。」

はな「はーい(苦笑)」

「そう言えば颯真くんって白北学院だったよね?もういっその事颯真くんに教えてもらえば良いんじゃない?デートもかねてさ!」

さくら「うーん···でも颯真くんの負担になりたくないから、一人で勉強した方が良いかな。これは私の問題だし。」

「とりあえず明日から放課後は図書室で勉強するね。」


○翌日 地下鉄 早朝

ホームで地下鉄が来るのを待つさくらと颯真(和真)

昨日の一連の出来事を颯真(和真)に話すさくら。

さくら「でね、お母さんに颯真くんと付き合ってること言ったら今度家に連れて来なさいって。」

颯真(和真)「マジで?じゃあ今度挨拶にいかないとな。」
(となるとやっぱ俺の姿でだよな。それまでになんとかしねーと)

さくら「···うん。それと最近帰りが遅いのをお母さんが心配してて···」

「中間と期末テストの結果が悪かったら塾に通うことになっちゃって···だからテストが終わるまで放課後は図書室で勉強するね。」

ガーン ショックを受ける颯真(和真)

颯真(和真)「じゃあ、テスト終わるまでは放課後会えないってこと?」

さくら「うん、ごめんね。」

颯真(和真)(うわー···テスト終了までつったらまだ2ヶ月以上あるじゃねーかよ。)

(朝は会えるから良いけど、放課後デートはしばらくお預けかーキツイな···けど、さくらが一番大変なんだから応援しないとな。)

「わかった。テストまで毎日大変だけど頑張れよ。」

「帰りとか心配だからなにかあったら···いや、なくても連絡して。俺もするし。そんでコイツも寂しいって言ってる。」

颯真(和真)は自分のスマホについてるウサギのストラップを揺らしてそう言った。

さくら「フフ、うん。じゃあ寂しくないように毎日連絡するね。」

それからというもの、さくらは毎日学校が終わると図書室に行きテスト勉強に励んだ。
そして勉強が終わると部活終わりのみっちゃんと一緒に帰った。


○学校からの帰り道 放課後

みっちゃん「さくら大丈夫?なんか一難去ってまた一難って感じだね。」

「ふられたのに颯真くんから告られて、付き合えたと思ったら今度は勉強地獄かぁー。」

さくら「しかたないよ。両立するならどっちも疎かにできないし、どっちも大事にしないと。」

ブブッ さくらのスマホが鳴る

  “勉強頑張ってるか?”

   “無理すんなよ。”

颯真の(和真)からのメールを見てパッと表情が明るくなるさくら。

みっちゃん「毎日メール来るんでしょ?愛されてるねぇ(笑)」

「いっぱい頑張ってテスト終わったらいっぱいイチャイチャしなよ!」

さくら「イチャイチャって···(笑)よし、明日もまた頑張ろっ。」

そんな日々が2週間程経とうとしていたある日


○さくらの学校の図書室 放課後

図書室が閉まる時間が迫り、一人残って帰る準備をしているさくら。

さくら(今日も勉強疲れた〜あっ、颯真くんにメールしないと。)

スマホを手にし、ふとウサギのストラップをツンツンする。

さくら(離れてても寂しくないよ。)

そう心の中でつぶやき、にやけていると···


有「西谷···さくらちゃん?」

さくらが顔を上げると、そこには特進科の森内有が立っていた。

さくら(えっ、森内さん!?)

「···はい。でもどうして名前···」

有「名前は普通科の友だちに聞いたの。」

「私は森内有。クラスは違うけど同じ2年だよ。」

さくら(森内さん、近くで見ても本当に綺麗···でも私になんの用だろう。)

有「私、前からさくらちゃんに聞きたいことがあったんだけど···」

「さくらちゃんって、颯真と付き合ってるの?」

さくら ドクン··· 「えっ···」

さくらはなぜか嫌な予感がした。

顔がこわばるさくらを見た有はハッとし···

有「あっ、突然ずけずけとごめんね。私、颯真と幼馴染なの。」

「颯真って昔から恋愛に全く興味なさそうだったんだけど、この前さくらちゃんとすごく仲良さそうにしているのを見かけたから気になって。」

さくら(森内さん、颯真くんの幼馴染なんだ···。)

“颯真”と何度も呼び捨てにする有に対し複雑な気持ちのさくらは···

さくら「えっと···颯真くんと付き合ってます。」

有「······っ」

少しの沈黙の後、有が口を開いた。

有「そう···なんだ。あの颯真に彼女がね~。幼馴染としては嬉しい限りだよ!」

明るい言葉とは裏腹に有の目には今にも涙があふれそうで、有は慌てて後ろを向く。

有「ごめん私、職員室に用事があるから行くね。」

そう言い残すと有は図書室から出て行った。

さくら(最後森内さん泣きそうな顔してたけど、颯真くんのこと···好き···なのかな。)

有の顔を思い出すと胸が痛むさくらだったが、それと同時に不安も募った。


○颯真の部屋 夜

和真「颯真に頼みがある。」

颯真「嫌な予感しかしないけど、何?」

和真「俺に···勉強を教えてくれ!!」

颯真「急になんでまた?」

さくらの一連の出来事を話す和真

颯真「で、2週間経って放課後さくらちゃんに会えないのがもう限界で、会う口実でさくらちゃんと一緒に勉強したいけど、全くわかんないから俺が和真に勉強を教えろと?」

コクコク 頷く和真

颯真「まぁ、いいけど···でもそんな短期間で覚えられるの?」

和真「や、全部は無理だとしても1問でも、2問でも解ければ現状よりはマシだろ?」

「勉強は会う口実もあるけど、これからもさくらと一緒にいるためには中途半端はやめようと思って。勉強も、そしてさくらの前で“颯真”として偽ってる自分も。」

颯真「そうだな。······前に、有が校門の前でさくらちゃんと一緒にいる俺を見たって言ってたけど、それ···多分和真だよな。」


和真「はっ!?有が?いつ···」


颯真「有のことだから変装していても至近距離だと和真だって気づく可能性高いぞ。」

「それにさくらちゃんと同じ学校だから、今後有とさくらちゃんが接触することも有り得るし。
だからやめるなら早い方が良いと思う。」

和真は拳を強く握りしめた。

和真「んなこと俺が一番わかってる。」

「···悪いけど、勉強頼むな。」


○一週間後の日曜日 駅の前

颯真(和真)の家で一緒に勉強をすることになったさくらは、駅で颯真(和真)を待っている。


さくら(颯真くんから一緒に勉強しようって誘ってくれたのは嬉しいけど、颯真くんのお家で勉強って···緊張するっ!!)

(付き合ってまだそんな経ってないのに家に行くのってやっぱ早いかな?でも、きっとお家の方もいるし何もないと思うけど···って何考えてるの(汗)勉強、勉強!なるべく颯真くんの負担にならないように、勉強に集中しないと。)

颯真(和真)「ごめん、待った?」

さくら「大丈夫だよ。今日は誘ってくれてありがとう。」

颯真(和真)「うん。じゃあ行こっか。」

颯真(和真)がいつもよりなんとなく元気がないように感じたさくらだったが、歩きながら普通に話す颯真(和真)を見て気のせいかな?と少し安心する。


○颯真(和真)の家の前

ガチャ

颯真(和真)「どーぞ。入って。」

さくら「おじゃまします。」

家の中はシーンと静まり返っている。

さくら「今日、お家の方は?」

颯真(和真)「あー、出かけてる。」

さくら ドキッ··· 

さくら「そ、そうなんだ···。」

家の人が留守と聞いて急に心臓の音が早くなるさくら。

颯真(和真)の部屋の前。

颯真(和真)「飲み物取ってくるから中で待ってて。」

さくら(ここが颯真くんのお部屋かぁ。机にテーブルにベッド···わぁ〜)

動揺してジタバタするさくら。

颯真(和真)「おまたせ。」

さくら「わっ!」

颯真(和真)「ん?なした?」

さくら「な、なんでもないよ。」

気を取り直してテーブルに向かい、勉強するさくらと颯真(和真)

颯真(和真)(この一週間、颯真に教えてもらった甲斐あって今のところ順調だ···!)

さくら「んー···この公式なんだっけ?」

颯真(和真)「どれどれ?······!?」

得意げにさくらの問題を見る颯真(和真)だが···

颯真(和真)(まっったくわかんねー。けど俺、今秀才の“颯真”だからわかんないは通用しない···と言うことは)

颯真(和真)はコッソリさくらの問題をメモすると···

颯真(和真)「ごめん、ちょっと腹痛くてトイレ行ってくるわ。」

そして部屋を出ると速攻で颯真の部屋に向かう颯真(和真)

颯真(和真)「颯真、難題が出た。教えてくれ!」

颯真「·····だろうと思った。俺今日家いて良かったな。」

そして部屋に戻ってきた颯真(和真)はさくらのわからない問題をスラスラ解いた。

その後も···

颯真(和真)「腹減ったからなんかお菓子探してくるわ。」

颯真(和真)「天気悪くなってきたから洗濯物を···」

と言い残し部屋をあとにする颯真(和真)にさくらは
「またいなくなっちゃったけど、大丈夫かな?私が聞き過ぎたから疲れちゃったのかも。」と心配していた。

しばらくして部屋に戻って来た颯真(和真)

颯真(和真)「さぁ、まだまだ頑張るぞー!」

さくら「颯真くん、そろそろ休憩しない?」

颯真(和真)「···そうだな。」
(待ってましたー!!)

勉強を一旦中断して休憩する2人。


颯真(和真)「なんか久しぶりだなーこんなにゆっくり一緒にいられるの。」

さくら「うん、そうだね。」

颯真(和真)「···この3週間、放課後さくらがいない帰り道を一人で歩くの結構寂しかった。」

「それと同時に、さくらがまた男に絡まれてないかすっげー心配だった。」

さくら「私、いつも颯真くんに助けて貰ってるよね。自分でハッキリ断れればいいんだけど···男の人が苦手で。」

「中高一貫の女子校だから今まで男の子と話す機会もなかったし、男の子の友達も全然いなくて。颯真くん以外でちゃんと話せるのって、お父さんとはなの家庭教師の人だけかな。」

颯真(和真)ピクッ(家庭教師?男??)

「まぁ、俺もだよ。男子校だし
(颯真、和真は学校は違うが共に男子校)
女友だちなんて近所に住む幼馴染位。」

「たまに家の近くとかで偶然会うことあるけど、今はもうあんま話さないな。」

(てゆーか、さくら男苦手なのに、あの時俺のこと助けてくれたんだな。どれだけ勇気いっただろうな···)


さくら(幼馴染······っ)

さくらは一瞬ためらったが、颯真(和真)に静かに問いかけた。

さくら「それって···森内さんのこと?」

颯真(和真)「そうだけど、なんでさくらが知ってんだ?」

さくら「実は···この前学校で森内さんに話しかけられて。颯真くんと幼馴染だって。」

「それで、颯真くんと付き合ってるか聞かれたの。」

颯真(和真)(マジ···か······)

「へーそうなんだ。俺、有に話してないのになんでさくらのことわかったんだろうね?」

さくら (颯真くん森内さんのこと有って呼ぶんだ)

「私と颯真くんが一緒にいるとこ見かけたって。それで同じ学校の友だちに私の名前聞いたみたい。」

颯真(和真)(この前颯真から聞いたやつか···やっぱ有に見られてたのか。)

「そっか。で、付き合ってるって言ったの?」

「言ったよ。言ったけど、なんか嫌だった。颯真くんのこと颯真、颯真って。颯真くんも有って呼ぶし···あれ?何言ってるんだろ、ごめ···私···」

だんだん声を荒げ顔を赤くし、目にいっぱい涙を浮かべるさくら。

その時颯真(和真)がさくらを強く抱きしめた。

颯真(和真)「不安にさせてごめん。有は幼馴染でそれ以上のことはない。俺が好きで俺の彼女はさくらだけだから。」

さくら「うん···。私もごめんね。これ完璧ヤキモチだね。」

颯真(和真)「······っ」
「さくらが妬いてくれんの嬉しすぎて···どうにかなりそ。」
(怒った顔も好みっつたら絶対ひかれるな)

そう言うと颯真(和真)はさくらの顔を見つめ口を近づけ······おでこの方にキスをした。

さくら(今おでこに···キスされた······)

颯真(和真)(はぁ···やばっ抑えきかねぇ。俺、この先大丈夫かな。)

颯真(和真)はさくらに対してだんだん制御が効かなくなっている自分と葛藤していた。

○有の部屋

有(颯真とさくらちゃん、やっぱり付き合ってたんだ···。)

(私の方がずっと昔から···颯真を好きなのに。)
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