悪役令嬢ふたりの、のほほん(?)サバイバル暮らし
 長い沈黙のあと、ハルベリー伯爵はもう一度大きくため息をついた。

「……よろしい、許可しよう」
「お父さま! ありがとうございます!」
「まったく、ずいぶんここでの生活が気に入ったようだ。確かに、今のアルベルティーヌは見たこともないほど顔色もだいぶ良くなった。表情も明るい。……このままここにいたほうが、アルベルティーヌのためなのかもしれぬな」

 蚊帳の外で息を飲んでふたりのやり取りを見ていたパメラが、おそるおそる口を挟む。

「……じゃ、じゃあ、アルベルティーヌさんはこれからも、ここでの暮らしは続行と言うことでよろしいんですの!?」
「ああ、そうだ。パメラ嬢、娘をよろしく頼んだぞ」
「もちろんです! 喜んで頼まれますわ!」

 パメラは揉み手せんばかりの笑顔で頷いた。ダグラスも、ホッと胸をなで下ろす。
 ハルベリー伯爵はマントを翻し、踵を返した。

「もちろん、ずっとこんな田舎に大事な娘を置いておく気はない。王子の一件を片付ければ、アルベルティーヌにはすぐに王都に帰ってもらう。――それからアルベルティーヌや」
「なにかしら?」
「これはハルベリー伯爵としての命令だ。優秀な人材は、早いうちに捕まえておくように」

 鋭い目が、ちらりとパメラを見る。優秀な人材たる当の本人(パメラ)は「何の話ですの……?」とポカンとしたものの、アルベルティーヌは晴れやかな笑顔で大きく手を振った。

「もちろん、その辺は抜かりなく、キッチリわたくしの手元に置いて一生こき使う気ですわ~~!」

 そう、アルベルティーヌもまた、なんだかんだで間違いなく悪役令嬢なのであった。
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