愛しているから 好きにしろ
【side 達也】

 どれだけ彼女の好きにさせてきただろう。

 別れたいと言われるのが怖かった。

 今になると、それがよく分かる。

 物分かりの良い彼氏。

 とにかく、最終的に俺の妻になってくれるなら、途中仕事をしたいと言っても遠回りしたとしても許してきた。

 他の男の影だけ気をつけた。

 今だから言えるが、彼女に内緒でプライベートを管理しようとしたこともある。

 だが、結局あの天然さと人をとりこにする何かが、彼女本来の素質だとわかり、それをコントロールするなんて不可能だと悟り始めた。

 自分の周りに紹介すると、皆彼女の味方に変身する。
 囲い込むために俺の兵隊に包囲させていたはずが、皆向きを変えて、俺を包囲してくる。

 お手上げだった。

 ある日、思いもかけない嫉妬から、彼女から結婚したいと言わせることができた。

 安心していたら、会社で女性陣に聞いた話を曲解し、初めて彼女が俺の前から黙って姿を消した。

 行き先を探られまいと連絡を断たれた。

 俺は半狂乱になり、人の話を全く聞かなくなってしまった。

 彼女がそばから消えれば俺も終わる。
 周りもそれに気づいたらしい。
 それくらい、おかしくなっていた。

 それ以降、彼女は変わった。

 常に俺の中にいる。

 仕事まで辞めて、俺の会社で働きたいと頼んできた。

 秘書ではないが、自分の得意な仕事を続けている。

 それも、彼女は自分で選択した。指図したことはない。

 そして、最後には……彼女の全てを俺に与えることを選択したと教えてくれた。


 Choose or give.
 本人の意思に任せる。
 それが、俺の愛し方。
 

 
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