囚われのシンデレラーafter storyー




高齢になったお互いの両親のことも考え、数年前から東京で暮らしていた。

この10数年の間に、佳孝さんはクラウンホテルから他の外資系ホテルにヘッドハンティグされ、そこでもたくさんの実績を上げて来た。

「センチュリーって……どうして?」
「今のセンチュリーは、はっきり言うと、かなり経営が厳しくなっている。この10年で年々業績を落としていた」
「そうなんですか」

センチュリーの経営からは完全に離れている身だ。でも、気にならないはずはない。

「――それで、センチュリーに戻って、立て直してくれないかという話だった」

同じ業界にいれば、佳孝さんの功績が耳に入ってもおかしくはない。
もともとは、西園寺が創業家だ。

「あずさの意見を聞きたい」

膝に抱いた私を佳孝さんが探るように見つめて来る。

「本当に厳しい状況なんだ。内部のことを調べてみたが、俺がいた時と全然違う。指揮系統も経営戦略も時代遅れで外資との競争に敵わなくなっている。センチュリーからの申し出を受けて、もし経営を立て直せなかったら。その責任はすべて俺の肩にのしかかる。あずさや、子どもたちに迷惑を掛けるかもしれない」
「それは、社長職に就く、ということですか?」
「そうなるな」

佳孝さんの肩に手を置いて、その目を見つめ返す。



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