春の欠片が雪に降る


 曖昧な笑顔を見せると、瀬古はそれ以上何も言わなかった。

(前のん……って、あれよね、元カノだよね)

 職場の先輩である瀬古が知るほどに、きちんと付き合っていた女性なんだろうか。
 
(別れてからちゃんと女も作らんし……って)

 その原因は、木下がいまだその女性を吹っ切れていないのだろうか?

(……松井さん、か)

 ほのりのように、何かが始まるかも、なんて期待をさせてしまって。受け入れてもらえなかった。
 瀬古は、見てきたのだから知っているんだろう。
 同じ轍を踏まぬよう、木下の優しさに勘違いしてしまわないようにと。

 ほのりはそっと胸に手を当てた。
 ズキズキと痛む胸は、なんて身勝手なんだろう。

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