春の欠片が雪に降る


 そう判断をしたならば。
 もちろん何も変わらない空間。

「なんや、ほのりんもあれかいな、独り身楽しんでるやつか?」

(ほのりんて……!)

 予想外。
 このデカ女に対して妙に可愛い呼び名を選択してきたな。
 思わず唇の端がひきつる。
 
「……そ、そうですね」

 かなり無理やりだけれど、ニッコリと笑みを作って答えた。
 あまり深く追求させずに、しかし場を盛り下げない方法がよくわからない。

 当たり障り無く答えている間にも相沢は、緊張を紛らわすためチビチビと頻繁に口に運んでいるビールの入ったグラスが、空になる前に注いでくれてしまう。

 困ったことに、お酌をする暇もなく何なら立場も逆であるべきなのに。

「ええやん。それやったら俺ともちょこちょこ遊んでや」
「いやいや、私なんてそんな」

 「恐れ多いです」なんて答えて。よくないと思いつつもアルコールだけが体内に摂取されていく。
 緊張のためだろう。
 食欲なんてない。

 しかしグラスに手をつけないわけにもいかないし、手をつけずに場をもたせる術もない。
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