竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


『すご〜い! ママ、見に行こうよ!』
(わっ! 動かないでって言ったのに!)


 サッと手でお腹を隠したからバレなかったけど、またいつ動くかわからない。早くこのお茶会を終わらせなきゃ。私はお腹に手を当てたまま、にっこりと笑顔を作った。


「はい! 喜んでご一緒させていただきますね」


 その返事にアビゲイル様も嬉しそうに笑っている。良かった。思ったより和やかに終わりそうだわ。私はほうっと息を吐き、温かいお茶を一口飲んだ。その時だった。


 コンコンとノックがあり、シリルさんの声が部屋に響いた。


「迷い人様、竜王様がお出ましになられます」
「えっ……?」


(竜王様? なんで今?)


 リディアさんが対応する前に、シリルさんが扉を開け、カツンと靴音が聞こえた。


 そこに立っていたのは、さっき会った時とは全く違う表情をした、竜王様だった。
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