竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


(いや、どちらかというと、リコは小さい竜のほうが好きみたいだな)


 リコはこの世界に、たったひとりで飛ばされてきた。若い女の身で、それがどんなにつらいことか。それならば迷い人の能力など関係なく、王宮でゆっくり過ごせばいい。そう思っていたのだ。それなのにリコは俺の心配をよそに、働くと言い出したから、心配になって部屋を訪ねた時だった。


 まわりに知られないよう、小さな竜になって部屋を訪ねると、リコは目をうるうるさせ俺を見つめていた。まるで黄金の宝箱でも見つけたように俺にふれ、話している間もずっとニヤニヤしっぱなしだった。


 顔には「なんてかわいいの!」と書いてあり、俺が人間の姿に戻ろうとすると、あからさまにガッカリした顔になる始末。


(竜王である俺の前で、あんなに失望する顔を見せるやつはいないぞ)


 あの時の残念そうな顔を思い出すと、どうしても笑ってしまう。しょうがないから、リコのためにしぶしぶ小さな竜のままで過ごしたのだった。
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