竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

(リコを返せ! あれは俺のものだ! リコ! リコ! リコ!)


 まるで飢餓状態だ。心の奥底がヒリヒリと痛み、失ってしまったものを取り戻そうと必死にもがいている。しかしそれがなんだと言うのだ。俺はリコの危険を救えず、目の前で奪われた無様な王。とても自分を許すことができず、気づくと俺はとがった爪を、自身の体に食い込ませていた。その時だった。


 ドオォンと近くで破壊音がした。すぐに音のした方を振り返ると、竜舎の一角から土煙が立ち昇っている。


『見つけたぞ……』


 リコという獲物を得て、帰巣本能で竜舎に帰ったのだろう。俺は急いでその場所まで飛び、人の姿に戻った。今の状態なら竜でいなくても、威圧ができるだろう。


「ここか!」

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