竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


 その事実をあわてて団長さんに伝えると、ライラさんが落とした竜石を嗅いでもらうことになった。しばらくフンフンと石を嗅いだあと、キールくんはしっぽをピンと立てた。


『これ! この竜気だよ!』


 その答えは、私が伝えるまでもなかったらしい。団長始め騎士たちは、みんなガッカリとした表情になっている。すると先ほど団長さんに命令を受けていた騎士があわてた様子で戻ってきて、追い打ちをかけるような情報を報告した。


「やはり寮にギークがいません! 貴重品や予備の竜石もすべて持ち出しているようです!」
「そうか。妹に自分の竜石を渡したか。きっと甲冑も一体、紛失しているだろうな……」


 試合に出る人以外は会場の警備をしていたらしく、そういった騎士たちは甲冑を身に着けていたという。だから顔をかぶとで隠して、竜のいる控えの場に出入りすることも可能だったのだろう。


 それでも仲間から犯人が出たこと、相棒である竜を危険にさらしたことなどで、騎士たちはみんな落ち込んでいる。するとその様子を見て、竜王様が活を入れるように大声で話し始めた。
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