竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

「不思議なお家ですね……」
「ああ、家の主人と同じだ」


 ここに住んでいるのは、竜王様のお妃様選定で使われる「水晶の番人」だった人。それでいてこの国の歴史や植物にも造詣が深い人物らしい。


「竜王様!」


 コツコツと少し神経質そうな靴音とともに、こちらに向かってくる人がいた。目の前まで来るとひざまずき、私たちが竜車から降りるのを待っている。


「ルシアン、久しぶりだな。出迎えご苦労」
「申し訳ございません。もう少し遅くなるかと思っておりました」
「なに、雨が振りそうだったのでな。早めに来ることにしたんだ。それより顔をあげてくれ」
「ありがとうございます」


 二人の挨拶が終わり、ルシアンと呼ばれた男性が顔を上げる。その見覚えのある顔に、私は思わず大きな声を出してしまった。


「シ、シリルさんですか?」

< 298 / 394 >

この作品をシェア

pagetop