竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

 ルシアンさんはそう言うと、私たちを館の中に招き入れてくれた。その優雅な所作もシリルさんそっくりで、後ろから見ていると違うのは声くらいだ。


「私はまだ大丈夫です! でも、ここに竜がいるんですか?」


 小型の竜にしても、この館では飼えないと思う。今まで見てきた竜舎は横にかなり広かった。きっと翼も伸ばせるよう、広めに作ってあるのだと思うのだけど、この館は細長いので竜がいるようには思えない。


「実は今までは飼っていなかったんです。しかしつい最近、裏の森に竜の子どもが落ちていまして」
落竜(らくりゅう)か……」
「はい。迷い人様はご存じないですよね。落竜というのは、親が子どもを空から落としていくことを言うんです」
「親が子どもを? どういうことですか?」


 一瞬、私の頭の中に獅子が生まれたばかりの子どもに試練を与えるため、高いところから突き落とす姿が浮かんできた。獅子は空想上の生き物だけど、ファンタジーな竜にもそういった子育て方法があるのかな?
< 300 / 394 >

この作品をシェア

pagetop