竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「しかし、このことは、秘密にしておかなくてはいけませんね。迷い人様の血を狙うという愚か者が出る可能性があります」


 結局私の血の効果については、竜王様、ルシアンさん、リディアさん、そしてシリルさんだけが知ることとなった。


「そうだ。忘れないうちに、例の葉の欠片を渡しておこう。それと、これがシリルからの報告書だ」


 竜王様がポケットから分厚い封筒と、小さい紙袋を渡した。


「ふむ。欠片なので断定はできませんが、昔、隣国の山に自生していた葉に似ていますね。効果も似ていたはずです。しかしあれは隣国がすべて燃やして、絶滅させたはずですが……」


 ルシアンさんは眉間にしわを寄せ、真剣な表情で考え込んでいた。するとそんな空気などまったく気にしないクルルくんが『すいた、はら、メシ』と、ご飯のおねだりをし始める。


「ルシアンさん! クルルくんが、ご飯をご所望です!」
「おお! それはすごい! では私たちも食事にしましょう」


 その後クルルくんは、竜王様以外の竜気にも少しずつ慣れていった。特にリディアさんを気に入ったようで、膝の上で寝てしまっている。これからもたくさんの人の竜気に慣れていけば、普通に飼い竜として育てることができるみたいだ。
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