竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


(なにがどうなってるのか、全くわからないけど、ちょうどいいわ! 私にも選定の儀を受けさせてもらおう!)


 バクンバクンと大きな心臓の音が、全身を震わせている。唇を噛み締めていないと、舌を噛んでしまいそうで、きゅっと口に力を入れた。


 お妃様を選ぶ水晶の部屋というのは、いつも私が過ごしている王宮の地下にあるらしい。今まで入ったことのない場所で、リディアさんが案内してくれなかったら迷子になっていた。


「こちらです」


 階段を降り、細い道を突き当たった場所に、大きな扉があった。二人の騎士が、その重厚な扉を開けてくれる。すると、その瞬間。


 私の耳に、信じられない言葉が飛び込んできた。



「お妃様が決定いたしました! 竜王様のお妃様は、アビゲイル・リプトン候爵令嬢です!」



(え? 今、なんて言ったの……?)


 目の前にはたくさんの令嬢たちが、拍手をしてアビゲイル様にお祝いの言葉を言っている。その中で私ひとりだけが、声も出せぬまま呆然と立ち尽くしていた。
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