竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜


「ちょ、ちょっと待ってくださ――」
「喋るな! 竜王様の御前だぞ!」
「ぐっ!」


 ほんの少し顔を上げ口を開いただけで、私は頭をわしづかみにされ、床に押さえつけられる。かなり乱暴にされたので、顔はジンジンと痛み、舌が少し切れてしまった。口の中に広がる血の味が、少しずつ現実で大変なことが起こっていることを実感させ始める。


(な、なんなのこれ? りゅ、りゅうおうって何?)


「一体この女はどこからやってきたのだ!」
「おまえら警備はしっかりやっていたのか!」
「しかしこの者は突然竜王様の前に現れたように見えました! 何か得体のしれない術を使ったのでは?」
「何! 魔術師だと!」


 床に押さえつけられているため、誰が喋っているのかわからない。きっとここの警備の人か何かだろう。警察だったらどうしよう。そんなふうに考えていたのに。「魔術」という言葉が聞こえてきたとたん、額から嫌な汗がつうっと落ちてきた。

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