婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される



「それで僕達も外出する時くらいは同じ指輪をしたいなと思って、特注で作ってもらったんだ」
「さっきの金物屋さんで頼んだの?」
「うん。実は夫婦で指輪をするのが流行りだっていうのも、あの店の人に聞いたんだ。息子夫婦が装飾品の店を出したいらしくて、最初のお客になって宣伝してほしいって。僕達は仲が良い事で有名だから」



 そう言ってエドは箱を手に取った。その時ふっと前世での記憶が蘇る。エドがフィリップ様で私がローズだった時だ。あの時の指輪は……と思いを馳せていると、エドが私に見せるように箱を開けた。



「エド、これって……」



 そこにはあの時と同じ、水色の石がついた指輪が2つ入っていた。
 しかも石をよく見ると、転移の魔法陣まで書いてある。



「僕達はもう魔力が無いから魔術は発動しないけど、この魔法陣はサラを守りたいという証だから」
「エド……」



 エドが箱から指輪をそっと取り出し、私を愛おしそうに見つめながら指輪をはめる。赤く染まった空は少しずつ暗くなっていて小さな星が輝き始めていた。家々に灯る蝋燭の温かい光が私達を優しく包み込む。
< 117 / 119 >

この作品をシェア

pagetop