婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


「え? きゃあ!」


 驚いたことに、エドが私を抱き上げていた。エド! なにしてるの!?


「あの! フィリップ殿下!?」
「なんで言わないんだ! さっき僕の足に引っかかって転んだ時、足に怪我をしたんだね?」


 してないですけど。むしろ元気に走れ回れそうですけど。それにエドの言い方は妙に芝居がかってておかしいよ!?


「気にしないでいい。僕のせいで怪我をしてしまったんだ。城まで連れて行ってあげよう」



 エドと同じ金色の髪に青い目のフィリップ殿下は、キラキラした笑顔をこちらに向ける。もう! そっくりな笑い方しないでよ! 顔立ちが似ているせいで、フィリップ様の顔が近くにあるとドキドキする。



 恥ずかしさでマルクさんの方を見たけど、「子供の足でついてこられるより、殿下が運んだ方が早いだろう」と思ってそうだ。「急ぎますよ」と急かすばかりで、何も気にしていない。まあ、今の私は10歳だから、微笑ましく見えるのだろうな。



 城の中に入った後もエドは私についてきそうだったが、マルクさんが引っ張って次の授業に連れて行ってしまった。私はというとたくさん試着して新しいドレスを選んだせいか、どっと疲れが出てきた。


「今日はもう、帰りましょう。疲れたわ……」


 どうせ今日はもうエドに会えないだろう。このままパーティーには参加せず家に帰ろうとしていたところ、後ろから声をかけられた。


「おい、おまえ。さっきと違うじゃないか」


 警戒した声色に驚き振り返ると、10歳くらいの少年が立っていた。

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