婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される

 エドにとっては私はサラで、10歳の令嬢の感覚ではないのだろう。でもジーク王子にとって私は、同じ年のただの女の子だ。しかもどうやら魔力に関して調べたがっているように見えた。他国で女を連れ込んでいると決めつけられたジーク王子は、顔を真っ赤にしている。


「俺はただ、こいつの体を調べたいだけだ!」
「体を調べるだと……!?」


 エドがものすごい形相で、ジーク王子を睨む。ジーク王子は小さく「ひっ!」と言ったが、まだ手を離さない。


 ダメだ。この2人、考えがすれ違ってる。エドは怒りのあまりジーク王子の手首を強く握っているらしく、彼は顔を歪めていた。ジーク王子も痛いと言いたくないのだろう。涙目でエドを睨んでいる。



 どうしよう。ジーク王子も意地をはって手を離しそうにないし、エドも引きそうにない。……そうだ! こういう時は、サラお得意のあの作戦を使おう!


 私は発作が起きたかの様に「うっ!」と苦しそうな声をあげ、足元をふらつかせた後、バタリと床に倒れ込んだ。


「サ…ローズ嬢!」
「な、なんだ? こいつ、どうしたんだ?」
(これで大丈夫なはず)


 突然私が倒れたことで、ジーク王子は掴んでいた手を離した。エドはサッと私をかかえ、抱き上げる。


「殿下、彼女は先ほども具合を悪くして、倒れています。どうかお引取りを」
「ふん、いいだろう」
(倒れたというか転んだのは、エドの足があったからなんだけど)

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