婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される

 それに転移する時に、私の魔力が吸い取られたのはなんだったのだろう。普通は魔石に貯めた魔力や自分自身が、魔法陣に魔力を流すものだけど。ジーク王子の魔術について考えていると、目的地に着いたようで開けた場所が見える。


「ここに連れてこい」


 ジーク王子が命令した場所に、騎士が投げるように私を置く。顔を上げると目の前には木が全く無く、遠くには我が国の城が見えた。キース王国の城に連れていくわけでもなく、こんな場所で何をするんだろう? 周りを見回してみても、兵器のようなものは見当たらなかった。



「私をどうするつもりなんですか?」


 ジーク王子は何も答えず、私の質問を無視して何か話している。ううん、私の質問じゃないな。私の存在自体を無視してるんだ。それなら、それでいい。今のうちに、エドのところに逃げなきゃ!


 そう思って指輪を使いエドの魔力を探知しようとした瞬間、腕にするどい痛みが走った。


「おまえ、何しようとしてるんだ?」
「うう…痛い…!」


 ジーク王子は私の腕をねじり上げ、指輪を見てニヤリと笑う。


「俺がこの指輪の魔術具に、気づいていないとでも?」


 ぞくりとする声が私を絶望に落とした。
< 65 / 119 >

この作品をシェア

pagetop