婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


 私はさらに魔力を、王子の体に叩き込んだ。魔法陣にまで魔力が届き、さっきとは比べ物にならないほど光っている。



「ぐわあああ!」
「ジーク殿下!?」



 ジーク王子は苦しさで叫び始め、その声に驚いた護衛達が駆け寄ってきた。しかしジーク王子の魔術は暴走し、コントロールできない。王子の手から出される無数の魔術攻撃は、駆けつける王子の護衛に無差別に当たり倒れていく。


「ゆ、許さんぞ……!」


 王子は必死に私の手をどかそうとするけど、弱った体ではそれもできず目を見開き苦しんでいる。


 まだだ。まだ流さなくては。私自身も魔力が底をつきかけているのがわかる。この感覚は身に覚えがある。それでもやらなくちゃ。私は必死に暴れる王子にしがみつき、少しでも多くの魔力を流した。


 それでも王子は抵抗し続け、私の手を離さない。しまった。目がもうろうとしてきた。足もガクガクして立っていられない。力が弱まったのに気づいた王子は、私をすぐさま突き飛ばす。



「こ、殺してやる……!」



 ジーク王子は私を睨みつけ、攻撃をしようと構え始めた。そんな、せっかくここまできたのに、あと少しなのに……無駄に終わるの?


 目が霞んできた。どうして? このままじゃ、エドを救えない。助けたいのに、幸せにしたいのに!


 ジーク王子の手が光り、私に攻撃をしかけてくる。私は指先ひとつ動かせず、その光の玉がこちらに向かってくるのを見ている。あと少しだったのに。そう思った時だった。


「サラ!」


 エドの姿が目の前にあった。

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