婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される



「今度こそ、幸せにしてあげるからね」



 何を言ったか聞こうと思った瞬間ゆっくりと目の前の扉が開き、大勢の人の視線を感じた俺は自然と姿勢を正す。一番奥の祭壇では、エドワードが真剣な顔で俺達を見ていた。娘と目が合ったのだろう。ふにゃりと顔を崩し、幸せそうにサラを見ている。



 なんだあいつ。また泣きそうじゃないか。泣き顔でもからかって緊張でもほぐそうかと、サラの方を振り返った。



 サラは真っ直ぐに前を見て、少し切ない遠い昔を思い出すような大人の顔をしている。 しかしそれは一瞬で、誰も気づかなかっただろう。みるみるうちにサラの大きな瞳には涙がいっぱいたまり、頬は苺色になっていく。



 ああ、娘はそしてもう息子か、2人は本当に幸せになるんだな。



 あふれそうな涙は、俺がぬぐってやるわけにはいかない。



 そう思うと娘の涙がこぼれ落ちないように、ゆっくりと息子のもとに一歩踏み出した。
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