婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


「それならもう子ども用の家具とか、買おうか?」
「エド……お父さんたちは孫用の家具を競って買ってるのよ。お母さんたちは洋服や絵本を買ってるわ。」
「知らなかった」


 自分で言うのもなんだけど、あなたは私ばかり見てるからね。全然まわりのことを気にしていない。今だって家の中だから良いけど、外でもすきあらばキスしてくる。


「絵本といえば、私達のあれが絵本になるなんてね……」
「教科書にも載ってるぞ」
「エドはまだいいわよ。私なんてあの時もう記憶があったから、授業の時なんだか恥ずかしくて」


 そう、私達のあの戦いは絵本どころか、教科書にも載っている。まあ大きな出来事だもんね。それでも当事者の私にとっては、なんだかおとぎ話の主人公になったみたいで実感がわかない。あの絵本は私達2人が過去を乗り越えた証として、大切に持っているけどね。



 でもそれならば私達は絵本の主人公のように、「2人はいつまでも幸せに暮らしました」と終わらせなくちゃいけない気がする。



 私は後ろを振り向き、エドの瞳を見つめる。何度生まれ変わっても、また一緒にいたい。次はもう記憶がない予感がする。それでも私は誓いたい。


「生まれ変わっても、絶対に幸せにしてあげるからね」


 私達は今日何度目かのキスをし、幸せをかみしめた。

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