婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


 少し寝よう。昨日から全然寝ていない。正直寝ても取れる疲れではないことは、僕が一番わかっていた。この魔術はかなりの魔力を使うから体の負担も大きい。最初の頃は師匠と2人でしていたからまだ良かったが、今では歳を重ねたこともあるのだろう。体は悲鳴をあげていた。


「また1年後までお預けか……」


 ベッドに腰掛けると同時にめまいに襲われ、どすんと音を立てて体がマットレスに沈み込んでいく。サラに夢で逢えたら嬉しいという気持ちはもう無い。もう何回もサラの夢は見たけど、目覚めるとその後は絶望するだけだ。サラは僕の目の前で死んだのだから。



「サラ! サラ! お願いだ! 僕を置いていかないでくれ!」



 サラが部屋にかけた結界を力づくで破り扉を開けると、サラは眠っているように死んでいた。僕はその光景が信じられなくてサラの体をゆするけど、奇跡は起こらない。まだこんなに君の体は温かいのに……



 ああ、またこの夢か。もううんざりだ。いつの間にか眠っていたらしく窓の外には綺麗な星が見えた。顔を手で覆うが指の隙間からは一筋の涙がこぼれ落ちる。
< 95 / 119 >

この作品をシェア

pagetop