婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される



 私達はというとお祭り用の特別メニューとして、苺づくしでおもてなしするため準備に忙しい。お店の内装も明日ばかりは苺柄だ。それに合わせてテーブルには鉢に入った苺を置き、小物も苺のケーキが映えるよう真っ白に変えていた。



「なんとか準備が終わったわね」
「明日は朝早いから、今日は早く寝なくちゃな」



 テーブルには明日から出す苺の紅茶の甘い香りが広がっている。乾燥された苺が入っていて砂糖を入れなくてもほんのり甘くて良い香りだわ。トッピングでミントをブレンドしてもさわやかで良いかもしれない……なんて考えていたところに双子のかわいい声が聞こえてきた。



「「おかあさーん 」」



 振り返る間もなくクロエとクリスが私のところにやってきた。何か後ろに持っているようだけど、なにかしら?



「おかあさん! 絵本よんで」



 クロエが後ろ手に持っていた絵本をサッと私の前に差し出した。なんだ、絵本だったの。私はクロエから絵本を受け取り、表紙も確認せずに開いた。母達がたくさん絵本を買ってくるから、毎日なにかしら読んでいる。昨日は花の妖精の話だったけど、今日はなんの絵本かしら。



「はいはい。じゃあ読んであげ――」
 ――たくない! この絵本は読んであげたくない!!

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