若旦那様の憂鬱
そんなに私って恋愛しない人だと思われてた?
確かに今まで恋愛話なんて一つもなかったけど…。

「花が好きな人、気になるわ。また今度教えてね。」
母は嬉しそうだが、義父はちょっと心配そうな顔をする。

「どこの馬の骨か分からん奴に、うちの可愛い花ちゃんをあげる訳にはいかないな。」

「なんだか本当のお父さんみたいな事を言うのね。」
嬉しそうに母が笑う。

「ただの片思いだよ。」
慌てて、何とか隠そうと試みる。

そこに康君が起きて来る。

「おはよ。何、みんなまだ居るの?もう7時半過ぎたよ。大丈夫?」
背伸びをしながら呑気にそう言ってくるから、3人で慌て壁時計を見上げ、

「大変!!」
と、それぞれ急いで残りを食べる。

私は8時半からだからまだ大丈夫だけど、洗濯干しもまだしてないし、朝食の後片付けもある。

何とか全ての家事をこなして、
「夕飯作っておくからね。」
出かけに康君にそう言うと、

「今日は見合いなんだろ?家の事は気にしなくていいよ。俺が、何か弁当買って来るからさ。
花は多分そいつと食事するだろ?」

「分からないけど…ありがとう、助かる。
康君もお見合いの事知ってだんだね…。」

「そりゃ、親父があんなに話してたら、嫌でも聞こえてくるさ。兄貴には言って無いけどな。」

「…柊君も知ってたよ…。」

「マジか…何か起きなきゃいいが……幸運を祈る。」

「何も起きないよ…。」

やっぱり康君って知ってるのかな?
ちょっとドキっとしながらも急いで支度をして、

「行ってきます。」
と、家を後にする。

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