若旦那様の憂鬱
ちょうど朝ごはんが出来た頃に義父も起きて来て、3人でいただきますをして食べ始める。

「そう言えば、今日が見合いの日だったね。花ちゃん1人で大丈夫かい?康生が暇なら車で送迎を頼んでもいいし。」
義父が心配してそう言ってくれる。

「大丈夫。タクシーで行くから。」
結局、お相手の顔写真も見てないけど、行けば分かるのかなぁ?と、ふと心配になる。

「ねぇ。私、お相手の方の写真も、名前も知らないんだけど、ホテルに行けば分かるようになってるの?」

「ああ、先方が花の事を知ってるらしいから、向こうから声をかけてくれるよ。大丈夫。」
義父がそう言って笑う。

「あら、名前も知らなかったの?前嶋貴文さんって方よ。歳は30くらいだったかしら、着てく洋服とか決まってるの?」
母が教えてくれる。

「うーん。悩んだけど無難に紺のワンピースにしようかと思って。」

「お見合いなら着物がいいんじゃないか?」

「2人で会うんだから洋服の方がいいわよ。もしかしたら意気投合して、夕飯食べに行ったりとかするでしょ?」

「彼の事だから、夕食はどこか予約しているかもしれないね。」
なんか夫婦2人で盛り上がり始めて、当の本人は置いけぼりみたい。

「申し訳ないけど、お断りしようと思ってるの。」
父にもそう告げておく。

だってあんまり期待されると、断り難くなりそうで怖いから…。

「何も会う前から決めなくても、それか…
もしかして好きな人でもいるのかい?
そう言えば、1番大事なそこをちゃんと聞くの忘れてたなぁ。」
義父が頭を掻きながら言ってくる。

好きな人…柊生の名前は出せないけど…
「実は…ちょっと気になってる人がいるの。」

「そうなの?」
「そうなのかい!!」

2人声を合わせて驚いた顔をこちらを向けてくる。

「えっと…、ただの片思いだけどね?」
2人の視線が痛くて恐る恐るそう言う。

「やだ、花は恋愛に奥手だから、いないものだと思っていたから。」
母は目を丸くして言う。

「そうだよ。もっと早く行ってくれたら、そう言ってお断り出来たのに。」
父も驚きながら言う。

「だから、ちゃんとそう言って断って来るつもりだよ。」
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