若旦那様の憂鬱

「そうなの?いつも心配させてごめんね…。
でも詩織ちゃんが、柊君が理想の彼氏だって言ってたよ。」
そう伝えると、

「花がそう思ってくれなきゃ意味が無い。」

えっ?と思わず見てしまう。

一瞬視線が交わり急に恥ずかしくなる。

柊君は、彼氏になった途端びっくりするほど甘い人になった。
こんなにもストレートに言う人だったなんて知らなかった。

「花が初めてなんだ。
こんなに心を取り乱されるのは、
ずっと前から花しか見えてないし、花以外に好かれても嬉しくない。」

凄い愛の告白をされてるような気になってくる。

「あの、柊君あんまりそう言う事、
ストレートに言わないで…恥ずかしい…。」

真っ赤になって俯く。

ハハっと柊生は爽やかに笑う。

「花は鈍いから、ちゃんと言葉にしないと伝わらないだろ。」

「…私のせい?」

「そこも花らしくて嫌いじゃ無いけど厄介だよな。
鈍すぎて他人の好意に気付かないから、
俺はずっと振り回されっぱなしだよ。」

「私の方が、柊君に振り回されてるんだよ。」
そう抗議する。

だっていつも意地悪で、過保護で、優しくて、その度に好きが積もって動けなくなって、心が乱されて一喜一憂する。

あれ?柊君も私と同じなんだ。

「柊君も…私と一緒だったんだね。
なんか嬉しい。」

「一緒じゃないだろ。
俺の方がより拗れてる。
我慢してた分どうしようも無く気持ちが溢れてくる。」

「私の方がドキドキしっぱなしで、
このままじゃ心臓に悪いんだから。」
負けずに言ってみる。

ハハっと柊君が笑う。

「花には長生きしてもらわないといけないから、それは困るな。」

「じゃあ、あんまりドキドキさせないで。」
怒ったような顔をする。

「じゃあ、あんまり俺を煽らないでくれ。」
と、柊君が笑いながら言う。

煽るってどういう事?

何も煽ってるつもり無いけどなぁ。
と、困ってしまう。

「どんな顔しても可愛過ぎて困るんだ。
それも自覚が無いからもっと困る。」

赤信号で止まって柊君が目を細めてこちらを見る。

こっちだって困る。

これじゃあ、堂々巡りじゃないの…
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