若旦那様の憂鬱
次に目が覚めて、
時計を見ると8時を過ぎていた。

花はそろそろとベッドから出て服を着替えて階段を降りる。

洗面所で顔を洗って、トイレに寄って、
朝食を作る為キッチンに向かう。
いつもの朝のルーティン。

ガチャっとキッチンのドアを開ける。

「あっ、やっと起きて来たな。おはよう。」
そこにはにこにこ笑顔の柊生が居て…。

「わぁっ!!」
と、花は驚く。

「おはよう、花。
どうしたの?そんなに驚いて。」
キッチンに立つ母が笑いながら声をかけてくる。

「えっ⁉︎……何で柊君がいるの…?」

目をこすりながら、
まだ夢を見ているのかと花は言う。

「居ちゃいけないか?」

ダイニングテーブルの椅子に座り、
机に肘をついて手に顎を乗せながら、
柊生が花に問う。

「柊生君、また弓道始めたらしくて朝練してたんだって。
朝、寄ってくれたのよ。
お母さん、そろそろ旅館に行く支度しなきゃいけないから花代わってくれる?
朝食は出来てるから柊生君と2人で食べて。」
母はそう言って、お弁当を詰め始める。

「あ、ありがとう…。」

瞬きしながら、花は何度となく柊生を見る。

「ごめん、お弁当も詰めてくれる?」

「う、うん…やっておくから、早く支度して。」
花はまだ目覚めない頭で、
母から菜箸を貰い、お弁当を詰めるのを代わる。
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