若旦那様の憂鬱
お昼時を過ぎていたせいか、
初めての回転寿司はさほど混まずに席に座る。

そのシステムを知らない柊生は、いろいろ花に聞いては感心し、驚き、納得しては頷いていた。

普段、喜怒哀楽の表情が乏しい柊生の色んな顔が見れて花は嬉しかった。

「凄っ!ここからお湯が出るんだ。」

柊生は感心しながらお茶を入れてくれる。

「このシステム考えた人、凄いな。」
タッチパネルを操作しながらそう言う。

「柊君て…今までどんなデートしてたの?」
気になって花は聞いてしまう。

「だから…俺と付き合っても楽しくないって…。」
柊生は寿司を食べながら不貞腐れ気味に言う。

瞬きをして花は考える。

まだ、兄では無くなった柊君とは3日しか過ごしてないけど、楽し過ぎて1日があっと言う間だけど…?

「柊君といると楽しいよ?」

「花だけは素のままの俺だから…もうこの話は終わりだ。…2度と聞くな。」

不貞腐れながらも、花に食べろといくらを取ってくれる。

きっと、こんな柊君は誰も見た事がないんだ。
と、花は気付く。

ふふふっと花が笑う。

そんな花を不思議そうに見つめる柊生が、つられてフッと笑う。
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