若旦那様の憂鬱
「もう、なんか儀式みたいで緊張しちゃうからサラッと柊君が決めてくれたらいいよ。」

花は思う。
とっくに気持ちは決まってるのに…、
柊君が律儀に特別視するから、
変に緊張しちゃって自分じゃ決められない。

「俺が決めたら意味が無い…。
ある意味儀式だろ。
花の大切は俺にとっても大切だし、俺だって緊張する。」

「じゃ…火曜日は?柊君お休みでしょ?」

もう、花にとっては緊張を通り越して、
早くこの儀式を終わらせてしまいたいとまで思う境地にきている。

「…ダメだ。今のは俺が誘導したみたいになってる…。」

せっかく勇気を振り絞ったのに…
変なとこ律儀で堅いんだよなぁと花は思う。

「あっ…じゃあ、結婚指輪を取りに行く日にしよっか?」

オーダーした結婚指輪は、
自分達でカスタマイズできるタイプのものだった為、完成までに数ヶ月の期間を有した。

「それは何日だったっけ?」

花はスマホのスケジュールを見て話す。

「えっと、3週間後の日曜日だよ。
丁度、ミスコンが終わった次の日。」
花は、柊生の運転する横顔を仰ぎ見る。

「…遠……。」
そう一言呟いて、

「分かった、ちゃんとしたホテルでも予約してレストランで…」

「ふ、普通でいいから、柊君のマンションがいい。」
花は慌てて柊生を止める。
これ以上ハードルあげないで……。

ハハッと柊生は笑う。
「俺達のマンションな。
分かった。それまでに俺が悶え死にしないようにちゃんと見ててくれ。」

はてな顔で柊生を見つめる花に、
もう一度笑って、

「俺をほっとかないで、かまって。」
そう言って、子犬のような視線を花に投げかける。

ああ!っと言う顔で花はこくんと頷き笑う。
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