若旦那様の憂鬱
花を抱き上げ膝に座らせそっと抱きしめる。
膝掛けでぐるぐる巻きにした花は大人しくて動かない。

「嫌だったか?」
反応が分からないから聞いてしまう。
花がぶんぶんと首を横に振るからホッと安心する。

「…柊君は、気持ち悪いって思わなかった?大丈夫?」
俺の事を気にかける花の優しさに大人気なく泣けそうになる。

抱きしめながら、
「花が今までよりももっとずっと大切で、
愛おしいと思った。
誰よりも何よりも花を俺の手で守りたい。」

「…ありがとう…。」
緊張が解けたように、力が抜け花が俺にもたれかかって来てくれる。

「見せてくれてありがとう。
本当は嫌だったよな、無理させてごめん…。」
出来るだけ優しく花の頭を撫ぜる。

花の目から涙が溢れて流れ出す。

ヒックヒックと泣き出してしまう花を
俺にはどうしようも無く止める術も分からない。

ただひたすら流れ出す涙を拭い、
額に、瞼に、頬にキスをする。

花の右足の裏側には六ヶ所ものタバコを押し付けた跡が残っていた。

幼い我が子になぜそんな事が出来たのか、
その男には怒りしか湧かない。
2度と花に会わせるものかと強く思う。

そして、花がここまで無事に生きてきてくれた奇跡を……。

これから先は幸せしかない未来を願ってやまない。

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