若旦那様の憂鬱
「い、今の大丈夫だったの?」
心配になって柊生に聞く。

「大丈夫だよ。向こうが禁止されてる差し入れを持って来たんだから。
もう婚約者の存在は知れ渡ってると思ったのにな。まぁ、これで隅々まで浸透するし良かった。」

それは…また敵が増えそうだけど…と花は内心心配になる。

「あっ、私片付けに行かなくちゃ。
柊君は時間まで寛いでいてね。」
バタバタと花は出て行こうとする。

「俺も手伝うって言っただろ、一緒に行くよ。」
花はでも……と、
思うけど時間も無い為仕方なく手伝って貰う。

花の仕事は審査員席を綺麗に片付けて、ステージにモップをかける事。

柊生がモップを持つから、
慌てて駄目っと何とか止めて、
代わりに審査員席の紙コップを集めて捨てたり布巾で拭いたり机を綺麗にしてもらう。

「花の仕事量多く無いか?後で会長に言っておいてやる。」
柊生が小さく耳打ちする。

本当はアシスタントの女性と3人でやって欲しいと言われていたが、
二次審査の時からなぜが花しか片付けに来なくて、仕方がないから1人で全部やっていた。

その真相はついさっきトイレに行った時に判明した。
柊生ファンである彼女達が、
花の事を良く思って無いと言う事を…

『柊様とあの子じゃ全然釣り合わないよね。なんか地味で普通過ぎるよねー。』

『柊様はもっとお姉様っぽい人の方が絶対似合うんだから。』

陰口を叩かれて、凹んだけど確かにそうだと思うから反論する事も出来無かった。
それが大半の人の評価なんだろうと思うとどうしようも無い。

花は掃除をしながらさっきの出来事を思い出していた。
あの、候補者の人も柊様ファンなんだろうな……。

とりあえず、片付けは開場の10分前に終わったので安堵する。

「最後の片付けも手伝うからな。」
柊生が花を心配してそう言う。

「司会者がやる事じゃ無いよ…。」
花は遠慮するけど、
きっと柊君は言っても聞かないだろうなぁと思う。

これ以上2人でいる所を見られると、
もっと酷いことを言われそうで怖い…。

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