若旦那様の憂鬱

咄嗟に掴んだバスタオルを体に巻き直し、
私は言われるままに洗い場のイスに座る。

「先に髪洗おうか。」
そう言って、
ざぶんと豪快に上がってくる柊君は何も隠してくれなくて、目のやり場に困る。

これはいつか慣れるのだろうか…?

2ヶ月一緒に住んでいれば、
週に2回か3回は身体を重ねる事はあった。

多分私の全て柊君は見ている訳で…、
きっと、恥ずかしがらなくてもと思っているんだろうけど…
胸元のバスタオルを抑えながらギュッと目を瞑る。

「花は何が怖い?どうして欲しい?」
私の髪を優しく洗いながら柊君が聞いて来る。

「…目のやり場に困るから…大事なところ…隠して欲しい…。」

「なるほど、分かった。」
そう言って、柊生はタオルを腰に巻いてくれる。

「隠したから目を開けて。」
花はそっと目を開ける。

目を合わせて、
「良かった。」
と柊生はにこりと笑う。

「後、ご要望は?」

「…出来るだけ見ないで…。」

「…それはちょっと無理だな。
ただ、隠されると逆に見たくなるのが男の心理なんだ。花が隠すからいけないんだと思う。」

だからって…はいどうぞっと見せれるほどの自信は無い。

髪を綺麗に洗い終え、アップにまとめて器用に留めてくれる。

「柊君て凄いね…、そう言う事器用だよね。」

「花が留めてるのを見てたから。
…もしかして、経験値が高いからとか思ってるんだったら違うからな。
一緒に風呂に入ったのだって花が初めてだからな。俺を何だと思ってるんだ。」
別に何も言ってないのに、
なぜかちょっとお怒り気味に柊君が言う。

「次は身体洗うから、ちょっとタオル外して。」
まだ続けるのかと柊君をちょっと睨む。

「背中洗うから。」
そう言って泡立てた泡で優しく洗っていく。
柊君に触られると、どこもかしこも気持ち良くなってしまうから困ってしまう…。

「柊君…あんまり触らないで。」

「それは…出来ない要望だなぁ…。
触らなきゃ洗えないだろ?」

「…じゃ、せめてタオルで…。」

「…タオルなんかで擦ったら花の綺麗な肌が傷付くだろ。
もしかして普段、タオルで洗ってるのか?
すぐやめてくれ。傷が付く。」

自分のことのように言ってくる。

「前も洗うからピシッとして。
手が邪魔、隠さないで。」
なぜかスパルタになってきた柊君は、
容赦無く触ってくる。

胸ばっか触らないでって言いたいのに、

気持ち良くなってしまって声を抑えるのが精一杯になってきた。
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