イケメンエリート、最後の独身


「ホヨン君、本当に大丈夫だから。
 後輩に介抱される事が一番プライドが傷つくって知ってるだろ?
 それに萌絵ちゃんは、萌絵ちゃんの家の場所を俺がよく知ってるから、俺が責任を持って送り届ける。
 だから、ホヨン君は、これからの時間、好きに使っていいよ」

 謙人は酸っぱいレモン水を一気飲みしたせいか、さっきまでの不機嫌さが消えていた。でも、まだ少しだけ目が座っている。必死に大きく開けて見せようとしているけれど。

「でも、明智さんに頼まれたんで…」

「明智君からは俺の方から言っとくから心配しなくてもいいよ。
 何なら、トオルや映司にもそう伝えておくから」

 ホヨンは肩をすくめ、頭を深々と下げた。
 まだ二十五歳のホヨンは、EOCの中では完全に弟キャラだ。甘える事の重要性もちゃんと分かっている。

「え、でも、萌絵さんも送ってもらえるんですか?」

 ホヨンは本当にずる賢い。さっきまで萌絵って呼び捨てにしていたのに。でも、そんな掴みどころのない性格が、きっと、萌絵の心をかき乱している。
 ホヨンの質問に対して、謙人は大きく頷いた。頭を大きく振ったせいで頭痛がしたのか、謙人は少し顔をしかめた。
 そんな謙人が何だか可愛らしい。


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