イケメンエリート、最後の独身


 まだお酒が抜けていない謙人は、目が座ったまま、その一連の動きをジッと見ていた。そして、また小さくため息をつく。

「ホヨン君、大丈夫だから帰っていいよ。
 萌絵ちゃんは俺が送っていくから。ホヨン君はここのスタッフと別の店に飲みに行ってもいいし」

 謙人はホヨンがここのスタッフと仲がいい事を知っていた。

「でも、明智さんと約束したんで。
 謙人さんと萌絵さんをちゃんと送り届けるって」

 萌絵は腕時計で時間を確認してからこう言った。

「私は大丈夫です。全然、酔ってないし、まだ最終にも間に合う時間だから」

 萌絵はこの日のために電車の最終時刻を調べていた。
 まだ、余裕で間に合う。
 謙人は冷たい水の中にレモンのスライスを三枚ほど入れて、ストローでクルクルかき混ぜている。そして、その酸っぱい水を一気に飲み干した。
 謙人は顔を酸っぱそうにしかめて、その後、目をぱっちり開けて見せる。
萌絵はそんな謙人の姿を見て、自分まで酸っぱそうな顔をしているのが分かった。
 ホヨンはそんな萌絵を見て笑う。


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