イケメンエリート、最後の独身


「今の萌絵ちゃんがどうしてもらいたいのか、俺に説明してもらえないかな。
 助けてあげたいんだけど、何をどうしたらいいのか分からないから」

 萌絵は何度も頷きながら、泣くのを必死に堪えていた。
 ハンカチで目元をゴシゴシ拭いて、大きな瞳で真っすぐに謙人を見る。

「電車の乗り方を教えてもらえませんか…?
 乗り換えの駅を見つけてくれるだけでいいんです。
 携帯もまだガラケーで、スマホはお給料が入ったら買う予定で…
 皆さん、アプリで乗換を検索するみたいなんですが、私のガラケーの機能では上手くできなくて…
 できるのかもしれないんですけど、上手く使いこなせません」

 萌絵の告白は、一瞬で謙人の保護本能を開花させた。
 今までは、男に生まれ落ちながらそういう感情には縁がなかった。でも、今は、その新鮮な感情に飲み込まれそうになっている。

「萌絵ちゃんがよかったらの話なんだけど…
 萌絵ちゃんの最寄りの駅まで一緒に付いて行っていいかな?
 今日でそのルートをしっかりとマスターしたいだろ?」


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