太陽と月の恋
入会コースはナイトコースなる18時以降使えるコースにし、原則月水金、土日は気が向いた時に行くよう自分でルールを課した。

順調に月水金と3回を終えて気付いたことだけど、河辺さんは平日夕方以降はキッズプログラムで体操教室も担当していてほとんど大人向けトレーニングルームでは見かけなかった。

何だろう、無料体験の日は特別だったのだろうか。

ただ、偶然私の顔を見つけた時に一言だけ、「入会したんすね!そのウェア、似合ってます!」と私が購入した水色のTシャツを褒めてくれた。

体重は1週間で51キロ台に再び落ちた。

ジム行ってシャワー浴びてすっぴんで帰ってくることを数回繰り返して1週間も経った頃には、気付けばクリスマスイブイブ、23日だった。

今日もトレーニングルームで姿を見かけなかったな。

私はあっという間に覚えたメニューを一通りこなして、時計を眺め、まだ時間があるからランニングマシンに移りながらそんなことを考える。

足元が自動で動き始め、強制的に走らされる。

こんな風に走るのは何年ぶりだろう。
私は何キロ走れるんだろう。

重い下半身を前に前にと動かす。
子どもの頃はもう少し軽かったのに。

ふと右横からぬっと筋肉が乗った太い腕が伸びてパネルのボタンを操作した。

「もう少し速めますね」

あの声。

私は横を見ると、ウルフカットの横顔があった。

「なんで」

咄嗟に出る声に、彼は笑顔を向ける。

「遅過ぎてじいさんばあさんの散歩と変わんないっす」

彼の目が一気に細くなる。

< 13 / 59 >

この作品をシェア

pagetop