太陽と月の恋
「いや、なんだろう、何も考えない時間が欲しかったのかも」
「ふうん、なんか悩みでもあったの」
「悩みっていう悩みもないけど、『自分は何もないな』『何も頑張ってないな』と思ってしまって」

体組成計に乗った朝、増えた体重を見て、どんどん雪だるまのように体が膨らんでいく自分がイメージできた。

それも美味しいものを食べて、好きなものを食べて、だったら幸せにリンクするけど、ただ私の場合は自分自信に興味がなくなっている現れのような気がした。

どうなってもいいや、どうせ私は一人だし、と漠然と思いかけた自分にブレーキをかけたかったのかも。

ネガティブな思考を断ち切るためにジムの体験を申し込んだのだ。

何か、自分をまだ諦めないように、遠い未来を考えないように。

「えーじゃあ俺がそこに入りたい」

彼は予想外の言葉を発した。

「え?」と聞き返す。

「そんなに木谷さんの中に何もないなら、俺が入りたい」

冗談とも取れるような笑みを浮かべるからタチが悪い。受け止め方に戸惑う。

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