太陽と月の恋
結局私たちは乾杯をシャンパンで揃えた。

仕事終わりの河辺さんはゆるっとしたニットにゆるっとしたパンツを合わせていた。少しだけ伸びた裾足の髪がニットに触れそうで触れない。

太いのに筋が通る首のラインにドキリとしながら、その姿を分析するように眺めていると「え?」と私を見た。
ゆるくパーマが全体的にかかっているからか、仕事終わりだからか、なぜかいつものハツラツとした雰囲気よりリラックスした空気を纏っている。

「俺のこと見過ぎじゃない?」

彼が笑った頃、メニューが運ばれてきた。

「木谷さんはさ、なんでジムに通おうと思ったの?」

脈絡もなく彼が話題を切り出す。

思いがけず、振られたあの12月14日を思い出してしまった。

「私に何もなかったからかなあ」
「何もない?」
「趣味も特技も、仕事もパッとしないし、ボーッと過ごしていたら四半世紀過ぎてしまったなって」

と、そこまで自分で言った後、違うな、と感じた。逆だ。

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