太陽と月の恋
灰色の駅伝ランナー
心なしか人が少なく感じる、不思議な1月3日。
行き交う人もみんな正月ボケしてるような表情だけど、年末年始休みなしのコンビニ店員だけはいつも通り勤務していた。

隣を歩く剛くんはしっかりと私の手を握る。

「明日から仕事だー」

剛くんの口から間抜けな声が漏れた。

「私、明日も休み」
「いいなー、誰もこんな年明け早々体動かしに来ねえよ」
「みんな太ったから行くんじゃない?」

たまに腕と腕がぶつかり合いながら、私たちは目的もなく歩く。

やっぱり駅の東口に行くと人は多かった。そうか、巷では冬のバーゲン開催中なのか。

「なんか見たいとこある?」
「んー、買いたいもの特にないんだよなー」
「俺イヤホン買いたいんだ、とりあえず入っていい?寒いから」

剛くんが顎で目先にあった大手家電量販店を指す。
私たちは寒さに背中を押されるようにその中に入った。売り物のエアコンを総稼働してるのかってくらい暖かかった。

「イヤホン何階だろ」

そう言いながら剛くんは私の手を引いて適当にエスカレーターを上がっていく。

「イヤホンどういうの買うの?」
「骨伝導のやつ」
「こつ・・・?」

2階から3階行きのエスカレーターに乗ろうとした時、同世代と思われる娘さんとお父さんの親子みたいな一組が2階からエスカレーターに乗ろうとしたので、剛くんが譲ろうと止まった。私は反動で剛くんの腕にぶつかる。

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