跡取りドクターの長い恋煩い
 「……笑美里も塾に行ってるのか?」

 「行ってない。家庭教師の先生に見てもらっているの」

 「家庭教師?」

 「塾って、中学受験の塾が多いだろう?
 うちの学校には合わないんだよ。笑美里もそのまま聖堂館の中学に上がるからな。
 だから家庭教師に学校の授業を先進みして見てもらっている」

 なるほど……。

 「笑美里、頑張れよ!  いつかお互い医者として一緒に仕事が出来たらいいな」

 「宗司くんと?  ……うん、笑美里頑張る!」

 笑美里がニコリと微笑んだ。
 それが子供時代に会った最後の日だった。

 それから俺は受験勉強を続け、県内で一番の進学校である男子校に合格した。

 そして予言通り、大学で幸太郎と再会することになったのだ。

 ところが予想外だったのは幸太郎が一浪だったこと。だから、俺たちは同学年になった。

 元々幼馴染で気安く喋れる仲だったので、俺たちは大学時代を同期の親友として過ごした。

 笑美里の情報は全て幸太郎から入って来ていた。
 相変わらずそそっかしいこと。
 勉強は出来るけれどムラがあること。
 親が、女の子だからという理由で、浪人はさせないと言っていること。
 家事全般が苦手だから、実家から大学に通わせたいと言っていること。
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