跡取りドクターの長い恋煩い
「……もう着替えるのめんどー……」

「あ、おいっ」

 着替えを用意せず、笑美里は服を脱ぎ出してしまった。下着姿のまま、ベッドに潜り込もうとする。

「笑美里、風邪をひくぞ」

「……さむい……」

「パジャマはどこだ?
 おい!  寝る前に服を着ろ!」

「……んー……」

「笑美里!  鍵だって困るだろう?」

 このまま寝られたら、俺が帰ったあと、鍵が掛かっていないままになってしまう。

「笑美里?」

「……そーしくん、さむい」

 この部屋はエアコンが付いているのでそこまで寒くはないが、まだ4月の初めだ。下着姿では寒いに決まっている。

 ベッドに近づくと、笑美里が布団の中で丸まっていた。左肩が剥き出しになっている。

 俺も酔っていたのだろうか。
 寒そうにしているその剥き出しの肩を、温めようとして思わず肌を撫でてしまった。
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