跡取りドクターの長い恋煩い
 実はこの隣同士の部屋だが、そうなるように仕組んだのは言うまでもない。

 廣澤が管理しているドクター専用マンションなんだから、それくらいは簡単だ。うちの両親は俺の気持ちを知っているし。

 部屋に入り、ゴソゴソと探し物をする笑美里。主に作り付けの本棚を探している。

 それにしても殺風景な部屋だな……。

 「何を探してる?」

 「んー……ないなぁ……。
 写真だよ〜。うーんと昔のね……」

 しかし待てどもその写真は見つからず、ずっと探し物をしていたせいか、笑美里の酔いは悪い方向へ向かってしまった。

「うーっ……気持ち悪い……」

「大丈夫か?」

「……吐く」

「ちょっと待て!」

 俺は急いで笑美里をトイレに連れていった。
 どうにか間に合いはしたが、服は少し汚れてしまった。
 無理やり歯を磨かせ、顔も洗わせた。
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