跡取りドクターの長い恋煩い
「それは申し訳ないと思っています。
 で、実は俺たち付き合い始めたんです」

「はぁ⁉」

「シッ……先生、声が大きいですよ」

 皆こっちを見てるだろう。

「な、いや、早過ぎないか⁉
 協力しろって言ってきたのは先々週の話だよな?」

 はい、その通りで。
 俺が4月1日に入職して、直ぐに父親である副院長と病棟担当指導医の矢本先生に今後の展望を説明した。

 17年来思い続けてきた芦田笑美里がもうすぐ初期研修医として入ってくること。
 いずれ俺の嫁にと考えていること。
 もちろん副院長はウエルカムだ。笑美里が嫁に来るんだからな。何としても俺に頑張って欲しいといった感じだった。もちろん母親も。

 元々父親同士は同期で親友だし、母親同士も、あの誕生日パーティー以来すっかり意気投合しており、今や旧知の仲だ。

 それにあの頃から笑美里は天使のように可愛かった。母親が娘にしたいと願うのは当然のことだと思う。
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