跡取りドクターの長い恋煩い
「森下さーん!  主任が呼んでたわよー」

「え?  あ、はーい。
 すみません芦田先生。ちょっと行ってきます!」

「いえ、森下さんありがとうございました」

 あの可愛いナースさんは森下さんね。
 名前も覚えていかないと!

 森下さんのおかげで、矢本先生の患者さんのデータは全てチェック出来たが、思い出されるのはさっきのこと。森下さんは何を言いかけたのかしら?


 16時少し前になって、矢本先生と宗司くんが7階に上がってきた。
 
「矢本先生お疲れ様です。
 早く来ていただいてすみません。……ちょっとカンファレンスルームへいいですか?」
 
「ああ、すまないね。揉めたんだろう?
 あ、芦田先生も来て」

「は、はい!」

 なんだろう?  揉めた?
 さっき森下さんが言ってたことかな。
 
 カンファレンスルームには高畑主任ともう1人のナース。それに矢本先生、宗司くん、私の5人が揃った。

 元々広くはない部屋なので、なかなかの圧迫感。座っているのは矢本先生と高畑主任だ。

「原因は?  何?」

「検査食です」

「は?」

「明日が内視鏡検査なので、中島さんに本日の夕食は検査食になる旨を伝えました」

「うん……それで?」
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