跡取りドクターの長い恋煩い
 そして、患者との距離感。これにも驚いた。

 適切な距離を保ちつつ、親しみのあるトークをする。それは意外と難しいことなのだ。
親しみを込めると、距離感を失くしてしまいがちだ。

 しかし、立場は医師と患者。そこには適切な距離感がなくてはならない。この距離感を失くすと、言葉は悪いが患者からナメられるということになりかねないのだ。

 笑美里は親しみを感じられるが、一歩引いた適切な距離感を保っていた。

 これは言葉遣いの問題だろう。
笑美里はどんな患者であっても口調が変わらない。

 患者は大抵自分より年齢が上だ。そんな自分の人生の倍以上生きてきた人に対して、ちゃんと敬意を持って話している。もちろん若い人にも。

 決して崩れることのない敬語は、柔らかな口調と表情で緩和され、その発言する人の持つ品格となる。

 礼儀正しさと品格を備え持った彼女は、あっという間に患者たちの人気者になった。

「すごいね、笑美里先生の人気」

「矢本先生!」

「人気が出るだろうと思ってたけど、これほどとは。さっきも病棟に上がったらナース達が騒いでたよ」

 ナース達が⁉ 患者じゃなくて?
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